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□輝く君に癒される 第1章ー前編ー
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「はぁー。終わった」
神楽坂貴人(かぐらざか きと)は溜息を吐いて、ベッドに背を持たれる。
引越しを済んだの部屋は、極僅かな家具が並んであるだけの殺風景な状態。
貴人は高校在学中の時に進学では無く、就職を希望した。
そして無事に就職先が決まり、卒業式を迎えて、直ぐに就職した会社の寮へと移り住んだ。
その訳は簡単だ。
今まで親戚の家で住んでいたから。
俺には両親がいない。
両親は俺が小さい時に交通事故で亡くなり、そこから親戚の家に移った。
親戚は嫌な顔もせずに俺を迎えてくれた。
それは嫌な顔もする筈が無いだろう。何千万と両親の生命保険金が付いてくるんだ。
そのお金に目が眩んだ親戚中で、誰が俺を育てるかで揉めてた。
結局は金か....
誰も俺の両親を悲しまず、俺をそういう色目で育てたいとしか考えて無かった環境から早く抜け出したいと考えて進学の道で無く、就職を選んで正解だったかも知れない。
ふと、手の平に持っている石を俺は見る。
亡くなった母の形見である濃い青のラピスラズリだ。
母が結婚した時に父から貰った物らしく、凄く大切にしていると生前に聞いたことがある。
濃い青のラピスラズリの輝きが、未だに衰えていないのを見れば、どれだけ母が大切にしていたのか分かる。
ずっと眺めていると、俺の意識は次第に遠のいていく。
「引越しの後だし、疲れたのかな....」
ベッドに横になるのも面倒で、俺はそのまま目を閉じて、眠った。