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□海に轟くは此方の愛歌 第1章
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「朝(はじめ)!」

東都藝術大学の黒い門の前で、僕の名前が呼ばれる。

僕は海原朝(かいばら はじめ)
朝と書いて“はじめ”と読む。
大概は“あさ”と呼ばれてしまい、何回も言い返す。
そのうち、それがあだ名になってしまう。
バイオリンが入った、防塵、防水、衝撃吸収が施されたケースとハンドバッグを持って、先程呼んだ声の主を目で追いかけて探す。

「こっち!」

声の主を発見して、駆け足で歩く。

「よう!」
「ごめん。お待たせ」

前髪が目の上ぐらいに整えて、輪郭に沿って顎ぐらいまである茶髪。
頭頂部には綺麗なスジが入ったセットで、見る人が見ればホストだと分かる。
顔もカッコ可愛いと、同じ男でも思うような容姿は相馬雪夜(そうま ゆきや)

雪夜は高校からの仲で、時々暇を見つけては僕と遊ぶ。
最初は違うタイプだと思っていたけれど、不思議と仲良くなれた。
今日はそんな雪夜と食事をしようと約束をしていた日。

「朝は何が食べたい?」

エスコートをする雪夜に、まるで僕がホストと遊んでるかのようだ。

「んー、雪夜は何が食べたい?」

質問に質問で返す。
昔から優柔不断な性格なので、他人を困らせたりしていたけど、音楽とコレと拘った物に対しては頑なに譲らない。

「最近出来て人気のパスタとかは?」
「うん。いいよ!」

流石ホスト。
抜かりの無く、話題の情報を持ってる。
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