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□輝く君に護られる
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城を歩く途中で俺とクジャは呼び止められる。
「魔王様、キト様。おかえりなさいませー」
地に足が付いていないような、間の伸びた声は一人しかいない。
「ベル。ただいま」
ベルは俺と魔王様の前で軽く会釈をする。
「休んでいるクルトから、伝言を預かっておりましてー。お二人の無事に帰られたことを心からご安心しましたとのことですー」
「えっ....クルトは何処か体調でも悪いの?」
俺の質問に、ベルは和かに話す。
「お恥ずかしながら、私との間に子に恵まれましてー、それで当分の間は休みを頂いておりますー」
照れたように笑う姿のベルに、こちらまで幸せを分けて貰えたような感じがする。
余りの喜ばしい報告に俺はベルの両手を掴み、お祝いをする。
「ベル!おめでとう。元気な子を生んでねってクルトに伝えてね!」
「あっ....うんー。キト様のお心遣いは嬉しいですけどー。ちょっと視線が....」
ベルの視線の先を見ると、クジャが仄かに黒いオーラを出しながら、ベルを睨んでいる。
「あっ!ごめんなさい....」
俺は掴んでいた手を素早く離す。
「いいえー。それではここで失礼致します」
ベルは会釈をして俺とクジャの横を通りずきて行った。
「あの....クジャ様....怒ってますか?」
「なにがだ?」
敢えて怒っていないことを装っているけれども、どう見ても黒いオーラを放って機嫌が悪そうな感じだ。
こうなると、ちょっと大変だ。