ファンタジー作品
□マヤカシ正義
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大きな平野を馬車で進む。
本来だったら、僕は着いて行かないはずだ。
でも、何で着いて行っているかというと、爽やかな笑顔を他に乗っているメンバー向ける、この勇者のせいだ。
彼はアルテミスと言って、美形、美丈夫、周りからの信頼度も高く、正に勇者なるべくしてなった人物。
二十歳の僕とは五つも離れているので、お兄ちゃんといった感じだ。小柄で華奢で平凡な顔の僕とは正反対で憧れの存在だ。
と、まぁ皆それに騙されていると気付いたのは数年前。
夜中に用事があり外へ出ると、勇者の家の物置から何か物音がするではないか!
「もしかして…魔物!?」
そう思いながら、恐る恐る近付くと魔物ではなく、アルテミスの姿だった。
「アルテミス?そこで何してるの?」
「あぁ?なんだよ、ユーリ?」
アルテミスはタバコを咥えて、勢い良く空へと吹かしていた。
しかも、口調は普段と違って悪い。
僕はいつもと違うアルテミスに、魔物に何か呪文を掛けられたと思った。
「ア、アルテミス、大丈夫!?僧侶か誰か呼んでこようか?」