東方邪龍伝
□第一章〜始まり〜
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とある山の鬱蒼と茂る森の中を黒斗は走っていた。
「はぁ、はぁ…今日の依頼はきついな…」
黒斗はこの山の中腹に「万屋『刃』」という店を構えるいわゆる何でも屋である。この山の中にはいくつかの集落があり、そこの住人達が毎日のように依頼を持ってくる。今黒斗はこの付近に現れた妖怪達を駆除している。
「ふっ、はっ!」
木の影から飛び出してきた2体を愛刀「黒刀(こくとう)『影縫(かげぬい)』」で斬る。
「…ったく、多すぎだ…」
30分ほど戦っているのに数が減っている気がしない。月が現れ森を優しく照らす。ざっと見回すと50匹ほどだ。
「一気に終わらすか…」
黒斗は能力を使い大量の影分身を作り、木の影に隠した。黒斗の能力は「影を操る程度の能力」。その名の通り影を操ることができる。
「チェックメイトだ。」
黒斗が影縫を振ると妖怪達の周りにある影から大量の黒斗の分身が飛び出してきた。それに驚いた妖怪達は為す術もなく、絶命した。
「ふぅ、終わったな。明日の朝に報酬もらいにいこ。」
家に帰った黒斗はリビングを見渡してこう呟いた。
「………今日も帰ってないか……。」
黒斗は母親を知らない。物心ついたときには居なかったからだ。父親は刃 緑葉(やいば みどは)。魔法使いだ。元々は黒斗と緑葉で依頼を受けていたが、ある依頼に行ったきり帰って来ないのだ。
「…親父のことだ。きっとすぐ帰って来るさ。」
そう自分に言い聞かせて自分の部屋に戻り魔法の練習を始める。
「……やっぱりうまくいかん。」
黒斗は全く魔法が使えない。自分でも不思議なぐらいだ
「…まぁいい。寝るか。」
そういって黒斗は眠りに就いた。