鏡に映りし影の龍

□プロローグ
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―――――――全てが燃えていた。
 机や椅子、複雑な数式と剣のような図の書かれた設計図、パソコン等のたくさんの機械類、そして―――父。その真ん中に一人ぽつんと少年が立っている。なぜかその少年の周りは燃えていない。その右手には白銀の太刀が握られている――――


「作戦完了です!」
「よし、よくやった!」

 覆面を被って制服を着た数名の男子が、同じ制服を着て、此方は覆面を被らずに腕を組んで仁王立ちしている男の元に作戦成功を伝える。その男達の目線の先には、燃え盛る研究所“だったもの”がある。

「それでは今から速やかに報告に向かう!」

 男が背を向けようとした次の瞬間、目の前の炎が消し飛んだ、否、“此方に飛んできた”。

「何っ!?」

 咄嗟に身を翻して避け、炎が飛んできた方を見ると、そこに一人の少年が立っていた。
 少しぼさぼさとした黒髪をなびかせるその右手には、柄の先に鳥のような龍の頭が口を開けたものが2つくっつくように並んでおり、その先から長い白銀の刃が伸びている太刀が握られている。龍の頭には登頂部に当たるところにそれぞれ青色の結晶が埋め込まれている。
 明らかに両手で扱うべきであろうそれを、少年はいとも簡単に片手で持ったまま此方に歩いてくる。

「う、撃てぇー!」

 男の掛け声とともに男子達の持っているアサルトライフルから大量の光弾が打ち出された。
 しかし少年は歩みを止めずに太刀を横薙ぎに振るう。すると、打ち出された光弾は全て少年に触れることなく――――“撃っていた男子達”を貫いた。

「なっ!?」

 少年はそのまま黙って歩いてくる。息絶えて倒れた男子達を見て呆然としていた男の顔が恐怖の色に染まっていく。

「く、来るなああ!」

 男は巨大なブラスター砲を展開し、放つ――が、光弾の向こうで少年が太刀を振るったように見えた次の瞬間、先程少年に放ったはずの光弾が男の目の前に迫っていた。

「う、うわああああぁぁぁあ!!」

 光弾が弾けると共に男の断末魔のような悲鳴が響き渡る。

 少年はまたゆっくりと歩き出す。
――――目に復讐の炎を燃やして。

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