色々

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「何だよ…これ」

違う、違うんだよ。お前ら何信じちゃってんの?大体ヒビりの俺に、こんな事出来るわけ無いだろ。なぁ。
笑いたかったけれど、声が出ない。キドとモモ、二人分の視線が刺さる。
痛い。痛いよ。

「…ち…違…」
「お兄ちゃん、本当に違うの?…悪いけど、私信じられないよ。このすぺっく?ってやつ、ぜーんぶお兄ちゃんに当てはまるんだけど」
「知らねぇよ…こんなスレ」
「だから。口では何とでも言える、と言っているんだ。…どうなんだ」

ぐるぐると周りが回りだす。実の妹にさえ怪しまれている。
窓から差し込む夕陽が、目に痛い位に焼き付く。

信じて。
…声が出ない。
俺は馬鹿みたいにはくはくと口を動かした。

「…私、お兄ちゃんがそんな人だと思わなかった」
「シンタロー、どうなんだと言っているんだ!」

責め立てられて、俺はソファーにがくん、と腰をおろした。
立てない。力がまるで入らないのだ。
ああ。何でこんな事に。

「…あ、セトさん…」
「キサラギさん!…と…」

扉を開けた人物は、いつも穏やかに笑っていて、とても素直な、セト、だった。

「…いらっしゃいっす…シンタローさん」
「…」

ろくに返事も返さず、俺の手はふらふらと空を掻いた。
あのセトでさえ?

「も・・・いい、わかった…おれが、わるい、」


何とかそれだけ絞り出した声は、それでも俺にしか聞こえない位の声量だった。

帰ろう。もうここには居られない。
だけど、それからどうするんだ?アジトはもちろんの事、家にだってモモが居る。
どうせ帰ったって解決しない。解りきっている。でもここには居たくない。

考えろ、考えろ考えろ考えろ。最善策は?いつもみたいに、ほら。俺なら考えられる筈だろ。
だけど何も出てこない。
一体どうすれば。ああああ、何で俺が。何で俺が!
がくがくと身体が震える。最高に気分が悪い。
吐、吐く、吐く、く、苦しい、くる、苦しい。
ちかちかしてきた視界はだんだんと暗くなる。光を持たない星が廻り出す。

おええええ。戻す戻す戻す。びちゃびちゃびちゃ。
俺は立っていられなくて、吐瀉物の中に倒れ込みそうになった。
いやいやいや。ここで倒れてどうすんだ。でも、もうどうせ吐いたんだし。
信じて…。頼むから、どうか信じてくれ。
ごぼごぼと咳をする。
冷ややかにセトが俺の横をすり抜けた。
誰も手を差しのべてくれない。
そうか。やっぱり俺はあの日からずっと、独りだったんだ。
ああ、寂しいなんて感情、久しぶりだな。

「…シンタロー君、どうしたの…それ」
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