色々

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「シンタロー。…このアジトの件に関して
は、一切の情報を口外する事―まぁ、報告だ
が―を禁止している。従って他言無用だ」

ふと後ろに気配を感じ、ソファで転寝をしかけていた俺はがくんと身体のバランスを失いかけた。耳につけっぱなしだったイヤホンがぴんとはり、床に落ちた。ぐしぐしと目を擦る。

「お、おう。…え、っと。何の話だ?」

ぎろり、とキドが俺を見下したように睨み付ける。『黙れ』、目がそう言っている。俺は大人しく次の言葉を待つことにした。何となく背筋を伸ばしてしまう辺りに、自分がビビッているのだと実感させられた。いやはや、何というか、その、情けない。我ながらダサい。

「…お前を信じたかった。いや、無論最初は信じたさ。誰か―第三者の悪い悪戯だろうな…と」

その何時に無く神妙な面持ちと声色に、俺はどうしてか、少し不安になった。
何かしらが起こる。そんな事は分かっている。
問題なのは、それが良くない事―誤解であったり、乃至は混乱や事件―であるか否か、という事。

「だが、この情報を漁れば漁るほど、俺はお前に疑いの念を抱いてしまう。何しろ、お前の素性にまるで当て嵌まらないものが無いんだからな」

苛々した様子でキドはまくしたてる。

「えーと…その。キド、悪いが何を言ってるかさっぱり分からねぇ。俺、何かしちまったか?」

正直に尋ねた方が良いかと思ったのだが、途端にキドは不快そうな表情を見せた。こきこきと首を鳴らし、ポケットから取り出したスマホを片手にちっ、と舌打ちする。何かを検索しているようだ。
おぉこれは、やっちまったか?畜生、俺最近はいかがわしいサイトなんて見てないってのに。またどうせ、エネやモモが何か言ったんだろうな。あぁ、面倒くさい。クソ。こんな事なら、家でネットしてるんだった…。

「…惚けるのもそろそろ終いにしてくれないか。こちらもそれほど我慢強いって訳じゃあないんでな…はっきり言ってくれ。『これ』をやったのはシンタロー、お前か?」
「うぇ?あ、あぁ、うん…?えぇと、」

ずいっとスマホを突きつけられる。恐る恐る画面を覗き込むと、そこには見たことの無いサイト―掲示板のまとめサイトだろうが―が表示されていた。
そしてその中でも特に、あるスレッドが俺の目を引いた。…何だよ、このスレタイ。これは…。

―『【これは】18歳だけど秘密組織入ったったwww【実話】』。

「…はぁ?」

何だこれ?これ俺の事か?いや。こんなスレを立てた覚えは無い。とすると、第三者による仕業な筈だ。そうに決まっている。

「あのな、キド。これは俺がやったんじゃ…」
「まぁ何とでも言えはするさ。なぁ、キサラギ」

その言葉にはっとなる。気が付くと、キドの後ろにモモが立っていた。

「まぁ、そうですよね。お兄ちゃん、ここ見てよ」

スクロールされたそこには、ある人物のスペックと思わしき文章が綴られていた。

『年:18
 職業:自宅警備員
 容姿:赤いジャージを着てる。大体これ
 身長:170cmと少し位』


―ぞっとした。


いや。これは俺じゃない。断言できる。だけどこんなに詳しく書いてあるなんて。しかも的確な文なだけあって、あまりに衝撃が強すぎる。
ただ、これだけは言える。

これは俺じゃ、ない。
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