四十五人四十五話

□一話 潮江文次郎
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潮江文次郎



ある日の深夜。
月はもう空高く登り、草木も眠る丑三つ時とよばれる時間。

草木も眠るのだから勿論、忍たまのよい子達も眠っているわけだが、

そんな中、学園内の一室のみ煌々と灯りが漏れていた。



『…潮江先輩…、三木ヱ門が落ちました。』

ついに机に突っ伏してしまった後輩を見て言う。

潮「構うな、起こす時間と体力すら惜しい。」

『はい。』

もうすでに下級生たちはダウンしている。
俺もこれで三徹目だ。

潮江先輩もいつにもまして凄い隈だ。

潮「どこまで終了している。」


『えー、左門に割り当ててた火薬委員会の予算書の計算見直し終わりました。
あと左吉に割り当てた用具委員会の予算書も見直し八割終わってます。三木ヱ門に割り当てた予算書は…』

三木ヱ門が突っ伏した書類の山からガサガサと漁る。

『学級委員長委員会と生物委員会ですね。見直しまですんでます。』

さすが三木ヱ門だ、手がかからなくて助かる。

潮「お前に割り当てた、図書委員会と保健委員会の予算書は。」

目の前に積み上げた予算書の束を指す。

『図書は見直しすんでます。保健は見直しあと半分くらいです。』


潮「よし、用具と保健の見直しを早急に終わらせろ。ミスの無いようにな。」

さすがに潮江先輩は自分が担当している会計委員会と体育委員会の予算書は終了しているようだ。

『はい。……と、言うことは潮江委員長は…。』

進行具合を報告しているうちに、あの難題にまだ手をつけていないことを思い出した。


潮「あぁ、あれを終わらせなくてはな…。」

潮江先輩も眉間にシワを寄せ、生気を失った瞳で、一つの予算書を見詰めている。

潮「はじめての頃に比べたら、まだ読めるようになった方だろうこれでも。」

そう、団蔵に割り当てた作法委員会の予算書だ。

団蔵はわが会計委員会きっての癖字…、いや、乱字の持ち主であり、
その字はほぼ読めないといっても過言ではない。
というか、読めない。

はじめて予算書を一人で担当させたときは、あまりのひどさに会計室の空気が凍った。


『すぐ終わらせて手伝います。』


潮「あぁ…」

そして潮江先輩は、十キロそろばんをたずさえ、死地へと向かっていった。
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