四十五人四十五話
□一話 潮江文次郎
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そして、数刻後。
会計室にはもう朝日が差し込んでいた。
潮「終わった…な」
ようやく解読し終わった団蔵の予算書を閉じ、ため息をこぼす。
『…で、ですね…。』
後輩の雪丸も、力尽きたように机に突っ伏した。
潮「俺が安藤先生に認め印を貰ってくる。少し寝ていろ。」
返事がない。
潮「おい、雪丸…って、もう撃沈してやがる…。」
仕方あるまい、毎度のことながら今回も後輩たちに無理をさせてしまった…。
安藤先生の皮肉を聞き流し、すべての委員会の予算書を提出し、認め印をもらって会計室に帰ると、
その会計室の凄まじさに入るのもためらわれた。
墨が飛び散り、書類が舞っている。
そこに横たわる会計委員たちは皆一様に苦悶の表情でねむっている。
死屍累々とは、この事か…。
潮「………今回もまた、無理をさせてしまったか…。」
部屋の方々で死んだように眠りこける団蔵、左吉、左門にも毛布をかけてやる。
そして、机に突っ伏したままの雪丸と三木ヱ門を畳の床に寝かせ、毛布をかける。
それぞれの額を撫でながら、
ポツリと心情を漏らした。
潮「よく頑張ったな、お前ら。」
朝の嫌に静かな会計室に、その声はよく響いた。
少し、後輩たちの寝顔が安らいだ気がした。
だが、さらにこのあと地獄の予算会議が始まるのだ。
考えたくもない…。
潮「俺も…少し寝…。」
その言葉の途中で、力尽き、
机に引き寄せられた。