俺得オリジナル小説まとめ

□notos━崩壊した世界にて━
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……それから、だいたい1ヶ月が経った。
一月も同じ場所にいれるなんてなんて幸福なのだろう。
いつもなら、もっと早く追い出されているのに。
この人は僕が魔力を持たないことを知っていてここに置いておいてくれている。
それが、何よりも嬉しかった。
あとあと知ったことだが、あの青年は「ロイ」といい、先祖代々刀鍛冶をしているらしい。
簡単な刀なら、魔術によって大量生産されたものでもいいのだが、刀鍛冶はオーダーメイドの刀を作ることができ、その刀はとても良い物となるらしい。

ある日、彼は僕にこう言った。

「一応お前自身を守るためにも、剣術くらいは身に付けた方がいいんじゃないか?」

剣術は一応何ヵ所か前にお世話になったところで身に付けてきた。
が、僕自身の剣は持っていなかった。
その旨を話すと、彼は「ならさ、作ってあげるよ」といい、早速材料を集めようとした。
…そのとき、僕は随分前にもらった貰い物のことを思い出した。
鉱山周辺の町にいたときのことだ。
そこの主人もとても良い人だった。
が、僕がいることによって、主人の仕事はなくなった。町の人にも見放された。
これ以上迷惑をかけたくない、という一心でまた新たな場所を探しに
向かおうと思っていたとき。主人が僕に立派な鉱石を1つ渡した。

「金がなくなって、困ったときに売りなさい。きっと君の助けになるはずさ。」

その鉱石は未だ売られることなくずっとポケットに入っている。
立派な、紫色の鉱石。これを使えないかロイさんに聞いたところ、買おうと思えばどうやら相当値の張るものらしく、これを使えば相当良い剣ができるそうだ。

………僕専用の剣、か。
少し、楽しみかもしれない。
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