俺得オリジナル小説まとめ
□notos━崩壊した世界にて━
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気がつけば、道ばたに1人いた。
誰に育てられ、誰の子なのかもわからない、傷だらけの少年が。
アッシュグレイの髪の少年の体にはたくさんの傷痕がついていた。
それはまるで、数々の死線をくぐり抜けてきた兵士のように。
「……いったい、俺はなんなんだ……」
そんな呟きも虚空に消え去っていく。
何故生きているのかもわからず、自分すら自分が誰だかもわからず。
それ故に少年は貶された。
それだけではない。
少年は『魔力』というものを持たなかった。
すべての人間が魔力を持つはずのこの世界でたった1人、魔力を持たない存在であった。
労働力を必要とするありとあらゆる組織……具体的には工場や軍隊、兵団などさまざまなところを転々として過ごしてきた。
しかし、どこもかしこも少年を受け入れようとはしなかった。
人を信じても裏切られ、傷つけられるだけ。
その言葉を具現化するかのように少年はずっと裏切られてきた。
どこに行く宛もなく、ただ1人のうのうと死を待つだけ。
あの日までは、彼はそんな少年だった。
ある、暑い夏の日。
また魔力を持たないことを理由に傷つけられた時だった。
「お前……怪我してるのか?」
1人の青年が少年に
声を掛けた。
少年は何も答えず、ただただ他人に対する憎悪だけを宿した冷たい瞳で青年を見つめた。
少年は満身創痍であった。
「……とりあえず、治癒だけはしてやるよ」
青年は魔術を展開した。
少年の傷はみるみる癒えていく。
「…………………ありがとう」
少年は小声でポツリと呟いた。
それが青年の耳に届いたのか否かはわからないが、青年は少年に優しい笑みを向けた。
「お前、1人なのか?」
いくら感謝をしたところで、体の傷を癒したところで心の傷は癒えてないようで少年はまだ冷たい瞳で青年を見つめる。
数秒たち、こくりと一度だけ頷くと青年はこう問いかけた。
「なら、俺んとこにこいよ。お前みたいに1人だったやつもたくさんいるし。」
生きるためのあてもない少年。
今まで出会った他人のなかで最も信頼できると青年のことを思ったのだろう。
少し戸惑ったそぶりを見せるものの、こくり、と頷いた。