SAND BEIGE -幼少期-
□SAND BEIGE 3
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あれから数日後。
我愛羅とナナセは、ほぼ毎日、夕方になるとあの公園に行って、一緒に遊ぶようになった。
我愛羅が先に公園に着くと、遊んでいる子供たちを遠くから見つめ、誰もいないベンチに座り、ナナセが来るのをじっと待っていた。
たったそれだけのことでも、子供たちにとっては恐怖で、途端に遊びをやめ、こそこそと隅のほうにかたまり、我愛羅の様子を窺う。
我愛羅は、痛む胸のあたりをぎゅっとつかみながら耐え、ナナセが来るのをひたすら待った。
(ナナセ、ちゃんが、きてくれたら、いたくなくなる。ナナセ、ちゃんは、ぼくに、おくすりをくれるんだ)
ナナセが先に公園に着いた時は、まず空いている遊具で遊んだ。
時々、好奇心旺盛な男の子が遊びに誘ってくれるが、以前、男の子にいじめられたことがトラウマになっており、「うん」とは言わない。
それに、我愛羅も一緒に遊んでいいかと聞くと、みな怖がって逃げてしまう。
周りの子供たちには見向きもせず、我愛羅とだけ遊ぶので。ナナセは、以前にも増して孤立していった。
でもナナセは、気にしていなかった。
同年代の子は、意地悪でがさつで嫌いだ。
我愛羅は、無口で大人しい印象だが、滑り台だって、ジャングルジムだって、シーソーだって、ブランコだって、一緒に笑って遊んでくれる。それに、砂遊びがとても上手だ。
ナナセ、ちゃん、上手だね、って褒めてくれる時もあれば、無理をすると、ナナセ、ちゃん、だめだよ、って言ってくれる。
砂遊びの時は、ナナセ、ちゃん、こうだよ、って、一緒になって作ってくれる。
ナナセは、素直で優しい我愛羅が大好きだ。
そしてとうとう、ナナセの母ムツが、月に数回ある病院当直の日がやって来た。
ナナセは朝からウキウキだった。
今日から1週間、里外任務に出る父を笑顔で送り出し、母親のいる病院に向かった。
午前中は、図書室で本を読んで過ごし、昼休みになると、ムツから今日の修行内容を教えられ、午後は病院の敷地内にある中庭で、一人で修行をした。
そして夕方。
勤務を終えた、近所に住むムツの部下が、ナナセを家まで送ってくれる。
ナナセは昨日から準備していたリュックを背負うと、しっかりと玄関に鍵をかけ、公園まで駆け出していった。