SAND BEIGE -幼少期-


□SAND BEIGE 1
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 風の国、砂隠れの里。
 祐木ナナセは、ここで生まれ、今現在6歳の女の子である。

 父親は、砂隠れの里の上忍で、「砂の最強兵士」の二つ名を持つ風遁使いで、母は、上忍の医療忍者だ。
 両親は任務で忙しく、父サハラは、里外任務で何日も帰らない日もあれば、母ムツは、急患がいれば病院に泊まり込むこともあった。
 よってナナセは、幼少の頃から、一人でいることが多かった。

 
 その日、ナナセは、帰ってくるかどうか分からない両親を待つため、とある公園に行くことにした。
 そこは、風影邸と隣り合わせに建つ病院から一本道で来れ、緩やかな坂を上ったところにあるため、ここにいれば、病院から帰ってくる母を見逃すことはない。

 時は夕刻。
 子供たちは皆、迎えに来てくれた母親と手をつないで、楽しそうに家路に向かっている。
 そこを逆行するように、一人とぼとぼと歩いている少女の姿は異質で、大人たちは遠巻きに見ていた。
 
 ナナセの両親は、忍びの中ではいわばエリートと言って良いくらいの地位にいる。
 サハラは、その名を近隣諸国に轟かせ、他里の忍びからは恐れらるほどの実力者だし、ムツは病院で要職に就く、優秀な医療忍者だ。

 忍びはおろか、一般の人からも尊敬のまなざしを受けてもいいくらいなのだが・・・、何せ、忙しすぎて、ご近所付き合いというものをほとんどしたことがなかった。

 忍びからは、「尊敬」はあるのだが、高嶺の存在過ぎて「畏怖」の念を持たれてしまったり、地域とのかかわりがなさ過ぎて、ご近所から「変わり者」と思われたりしている。

 そんな、いわゆる世間一般とはかけ離れた家族を、陰湿で保守的、異質を忌み嫌う体質である砂隠れの民には、ナナセの家族を、素直に受け入れることは、困難だった。
 
 よって、ナナセには、友達がいない。

 時々、無邪気な子供がナナセを遊びに誘ってくれることもあったが、後でその子は、こっぴどく親に叱られ、もう二度とナナセに声をかけることはなかった。
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