SAND BEIGE -幼少期-


□SAND BEIGE 2
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 夕食後もお風呂でも散々はしゃいだナナセは、疲れたのか、いつもより早い時間に、ベッドに入った。
 付き添う母親に、我愛羅と夜叉丸、そしてクマのぬいぐるみの話をし、嬉しそうな笑みを浮かべて、眠りにつく。
 ムツはそっと布団をかけてやった。

「寝たのか?」
「ええ。あなたが買ってあげた、クマのぬいぐるみを抱きしめてね。」
「そうか。」

 ムツはお茶を入れ、夫の隣に座った。

「里外任務、お疲れ様。無事に帰ってきてくれて、ありがとう。」
「お前も。ナナセと一緒に、留守を守ってくれて、ありがとう。」

 ねぎらいの言葉をかけ、互いに身を寄せ合う。
 こうして夫婦でまったりと過ごすのも、3週間ぶりだ。

「あなた。さっきのナナセの話、どう思う?」
「どうって・・・。」
「偶然かしら。」

 我愛羅とナナセが出逢ったことは。

「風影様が関わっているというのか?」
「・・・。」
「・・・風影様に、何か言われたのか?」
「特に何か言われたわけじゃないわ。だけど、私がこうして砂隠れの里にいられるのは・・・、この力があるからだと思ってる。いずれ、我愛羅様のために使う、それも、そう遠くない将来だと思うの。」

 サハラはそっとムツの肩を抱いた。

「お前がここにいるのは、俺と結婚したからだよ。」

 出逢いは、10年以上前になる。
 風の国の砂漠の入り口で倒れているムツを発見したのが、サハラだった。
 ムツの境遇に、最初は同情だったが、次第に惹かれていったサハラ。
 それは、ムツも同じだった。
 砂隠れの里に居を構え、結婚するに至るまで、様々な紆余曲折があった。
 いまだに解決していない問題も抱えている。

「後悔、してないのか? 砂の里に来たこと。」
「・・・あなただって・・・。」

 それでも、一緒にいたかった。
 今では、一人娘に恵まれ、家族3人で暮らすことに、幸せを感じている。
 忍びという家業を続けている以上、その幸せがいつまで続くか分からないからこそ、少しでも長く・・・と、願ってしまう。

 ムツの肩を抱くサハラの腕に、ぐっと力がこもった。

「お前たちは、俺が必ず守るから。」
「私も、ナナセを守ってみせるわ。あの子は、私たちの宝物よ。」
「あぁ。」

 もしかしたら、恐れていた運命の歯車が、かみ合い、回り始めてしまったかもしれない。
 それでも、生きている限り、前に進まなければならない。
 例えそこに、大きな困難が待ち受けていようとも。
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