長編 『 お隣さん。 』

□お隣さん。1
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カーテンの隙間から陽射しが差し込んで部屋を明るく照らす。
それが朝だということを知らせる。

「ん……あれ…?ここ……ああ、そっか…。俺、引っ越して……」

眠い目を擦りながら、独り言で自問自答する。

今は朝の8時過ぎ。
寝起きが決していいとは言えない俺にしてはかなり早起き。

慣れない部屋に少し目が覚めてしまい、とりあえず歯磨きをする。

スウェットのズボンはそのままで上をTシャツに着替え、いつものパーカーを羽織る。

春といってもまだ3月。
朝は寒い。

イヤホンでお気に入りの洋楽を聴きながら、昨夜散歩で見つけたコンビニに向かった。

サンドイッチとミネラルウォーターとお菓子を買って来た道を戻る。

自炊できるようになんなきゃな。
ずっとコンビニ弁当も嫌だし、てか高いし。

そんなことを考えながら家の扉の前で鍵を探していると

(カンカンカン)

階段を上る音。

音がする方を見てみると、柔らかそうな茶髪のマッシュヘアーの人が階段を上ってくる。

昨日会った人じゃないし、隣の人?
後ろ姿しか見えないけど…女の人?!

えぇーやば!隣に女性が住んでるってだけでちょっとドキドキしちゃうんだけど!
ドラマじゃないけど、なんか起きちゃったり……!!

「………あの…」

なんて眠気も吹っ飛び、そんな妄想をしていると、彼女は目の前に来ていたらしく…

ん…?

……かの、じょ…?

あれ…?

女の人ってこんな声低いっけ?

服装だって全然女性らしくない。
上下グレーのダラっとしたスウェットにサンダル。

手には俺と同じコンビニの袋。

てか…

俺は顔を上げた。
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