長編 『 お隣さん。 』

□お隣さん。1
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そう、上げた。

この人、

俺より背…高い…?

俺の身長は決して高いとはいえないけど、女性の平均と比べればなんとか高い方か、同じくらいだ。

たぶん…。

けど、この人は圧倒的に俺より高いし、俺の目測だと170以上はある。

この人………

男だ!!!!!

「あのー……」

「ぅうわ!ごめんなさい!!」

彼は眉間に皺を寄せて俺の顔を覗き込んでいた。

俺はびっくりして後ろに勢いよく下がってしまい、扉に背中をぶつける。

……痛っ…

彼はそんな俺を横目に目の前を通り過ぎていく。

俺は、はっ…として咄嗟に彼の腕を掴んでしまった。

「………何?」

少し驚いていたが、また無表情に戻り俺に目線だけを向ける。

「え?!ああ!!いや、あの、有岡大貴です!!昨日隣に引っ越してきました!!!」

俺は咄嗟に出てきた言葉で挨拶をした。

すると彼は俺に向き直り、

「……あぁ…伊野尾、です。」

「いのー、さん?…えっと……あっ!!ちょっと待っててください!」

俺はあることを思い出し、急いで自分家の扉を開ける。

しかし…

(ガンッ)

鍵をまだ開けていなかったことを忘れていた俺は、勢いよく開けようとした反動で扉にぶつかりそうになった。

恥ずかしさと戦いながら急いでポケットから鍵を取り出し、扉を開ける。

その一部始終を見ていた、いのおさんは…

「…ふふっ」

笑った。

笑った?!
笑ったよね?!
え、すげぇ恥ずかしいんだけど?!?!

逃げるように部屋に入り、昨日渡せなかった手土産を持っていのおさんのところに戻る。
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