『##NAME1##、メリークリスマス。』
片膝を地面につけ、目線を低くして、一本のバラを私に差し出してくる彼。
「わあ、ありがとう!」
そういい、素直にバラを受けとる。
ーーこれで何本目になるだろう。
私の彼氏、松野カラ松は毎度何かの記念日があるごとにバラをプレゼントしてくれる。それに決まって一本だけ。これは付き合った日からずっと続いてることで、もうあたりまえのようなことになっている。
はじめてくれた日に彼は『##NAME1##、バラの花言葉、何か知っているか?…ふ……お前だけ……Only YOU……て意味なんだぜ?』とか痛いこと言ってたけど、ああ、これは自分達なりの挨拶なんだな、と最近思えてきた。
カラ松とわかれて家に帰った私は、すぐにバラを自分の部屋のドアに逆さまにして紐でつるしあげた。
ふと、その向かい先の机に置いてある今まで貰ってきたドライフラワー状のバラの束が視野に映った。
……一体何本あるんだろう?なんだかすっごく気になるけどむやみに触って花びらを崩したくないし、大切に置いておきたい。だから私は数えるのをやめておいた。
ーーー新年になり、ああ、今年もくれるな、と期待していた。
だが、私の期待は外れ、その日ははじめてバラをくれない記念日となった。
「…おかしいなぁ……」すごく不思議だ。今まで忘れることなくずっと貰ってきたのに。なにか意味があるのかな……?
そう疑問を残しながら迎えた私の誕生日。
やっぱり今回も彼からのバラのプレゼントはない。
ずっともやもやする。私は彼に素直に聞いてみることにした。
「ねぇ、カラ松。もうバラはくれないの?」
帰り道にさりげなくきいてみた。すると、彼は何も言わなくなり、二人の間に沈黙がつづく。
「……どしたの?」
沈黙に我慢できなくなった私が彼の顔を覗きこむように見ると、いきなりさっとサングラス外し、私の肩を掴んで、グイッ、と私を向かい合わせた。
『なあ……##NAME1##……』
「なっなに……いきなり」
急な展開に、私は身を強ばらせてしまう。
『俺は今までお前にバラをプレゼントし続けた。』
「うん。」
『今日も……ほら、これ……』
革ジャンからすっと一本のバラを出してきて、私の前にさしだす。
「わあ!ありがとう!」
久し振りにみる。
何回目、何本目になろうがこの瞬間はやっぱりうれしい。
私は彼の手から優しくバラをうけとると、それを胸元できゆっと軽く抱いた。
『本当は丁度そうなるように毎回渡したかったんだか、ちょっと俺の計算ミスでな、、』
「……それって、どういうこと?」
『##NAME1##、バラの花言葉、覚えているか?』
「貴女だけ、でしょ?」
『そうだ。でもそれは一本だけのときだ。』
「うん。」
いつもサングラスをつけている彼が、私をあまりにも真剣な目で見てくるものだから、凄く緊張感する。
『これで99本目になる。』
「……そんなにもらってたんだ。」
だからこの前までくれなかったのか。なんだかもやもやが消えてすっきりした。
『それで、ちゃんと花言葉があるんだ。』
『最愛……お前を一生愛す……』
私と彼との距離が少し縮まり、彼がうっすら顔を赤らめて力強く言った。私も嬉さと恥ずかしさから顔面を真っ赤にし、しばらく返事ができずお互いに見つめあった。
…心臓がどっどっ、と凄くはげしく振動する。聞こえないけど、彼も同じようになってるはず。
「……あ、ありがとう……すごく……嬉しい」
『いいのか?お前のことを一生愛しても。』
こんなに嬉しいのに、自信をもてず私の気持ちにまったく気づいてない彼にばかだなぁ、と私はぎゅっと抱きついた。
「私のこと……一生、愛してください。」
彼がグッと腕の力を強くして、私をきつく抱き締める。
幸せな時間が続く。ずっとこのままでいたい。これからもずっと愛してください。私は心の中で彼に語りかける。
999本になるまでお前にこれからもバラを渡しつづけるぜ……
カラ松もそう心から彼女に語りかけた。