ツバサ・クロニクル

□秘術の国
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黒鋼「ああー?次はどこだ?」



ファイ「わー。なんだか見られてるみたいー」



ツバキ「状況的にはかなり面倒くさそうね」



モコナ「てへ♡モコナ注目のまとー!」



黒鋼「また妙な所に落としやがって!」



「なんだ、こいつら!どこから出て来やがった!!」



男が近くにいたサクラの腕を掴んで引っ張る



だが次の瞬間、男は2人の人物達によって蹴り飛ばされた



黒鋼「お」



ファイ「あ」



モコナ「わ♡」



ツバキ〈【ハッ】私は何を?〉



小狼と共に飛び蹴りを食らわせた張本人であるはずのツバキ



だがこの時、ツバキには身に覚えがなかったのだ



「お前ら!誰を足蹴にしたと思ってるんだ!?」



ツバキ「し、知らないわよ!そんなの。気付いたらやっちゃってたんだもん」



ファイ「うわぁ、言っちゃったよー」



黒鋼「気付いたらって、マジかよ」



「ふざけてるのか!?」



ツバキ「ふざけてんのはあんたの顔の方でしょう!?」



「な、なんだと!?」



少女「やめろ!!誰かれ構わずちょっかい出すな!このバカ息子!!」



小狼〈女の子?〉



春香(チュニャン)!!誰がバカ息子だ!!」



春香「【キョロキョロ】お前以外にバカがいるか?」



「このー!」



「失礼な!!」



高麗(コリョ)国の蓮姫(リョンフィ)を治める領主(リャンバン)様のご子息だぞ!」



春香「領主といっても、一年前まではただの流れの秘術師(シンバン)だったろう」



親父(アボジ)をばかにするかー!領主に逆らったらどうなるか、わかってるんだろうな!春香!!」



春香「【グッ】」



「この無礼のむくいを受けるぞ!覚悟しろよ!」



そう捨て台詞を言うと、領主の息子とやらは手下達と帰っていく



小狼「怪我は?」



サクラ「大丈夫です。ありがとう」



その言葉に、小狼は笑顔を向ける



サクラ「ツバキさんも、ありがとう」



ツバキ「ああ、うん。気にしないで。なんか、勝手に喧嘩売っちゃっただけみたいだから。あと、さん付けなんかしなくていいよ、もっと気楽で」



ファイ「やー、なんか到着早々派手だったねー」



モコナ「小狼とツバキすごいー!跳び蹴り!」



黒鋼「んだ、ありゃ」



そこで小狼は、自分達が落ちたのは売られていた物の上だったということに気付く



小狼「すみません、売り物なのに」



頭を下げ、木箱を元の位置に戻す小狼に、店の男は気にしてなさそうに笑い返す



モコナ「モコナもお手伝いするー!」



ファイ「ほら、黒ぴんも拾ってー」



黒鋼「あー?めんどくせーなー」



ツバキ「ほらほら!つべこべ言わずにさっさと拾う!」



春香「あいつら、また市場で好き勝手して!」



「この町にも早く暗行御吏(アメンオサ)が来てくれればいいんだが・・・」



ツバキ〈アメンオサ?〉



春香「【ハッ】ヘンな格好」



ファイ「あはははははー。ヘンだってー、黒りんの格好ー!!」



黒鋼「俺がヘンならお前らもヘンだろ!」



ツバキ「私のは一般的な制服よ!どこがヘンなのよ!?」



黒鋼「十分ヘンだろうが!」



春香「お前達、ひょっとして!!来い!」



小狼「あ!待って下さい!」



ツバキ「ちょっと!?待ちなさいよー!」



ファイ「なんか忙しいねぇ」



黒鋼「めんどくせー!」



春香と呼ばれていた少女に手を引かれ、この場から走り去るサクラ



それを追い掛けて小狼、ツバキ、ファイ、黒鋼の順で走り出す



ちなみにモコナは小狼の頭に飛び乗ってしがみついていた、とか・・・




















小狼「あ、あの、ここは・・・」



春香「私の家だ」



小狼「どうして急に・・・」



春香「お前達、言うことはないか?」



小狼「え?え?」



春香「ないか!?」



小狼「いや、あの、おれ達はこの国には来たばかりで。君とも会ったばかりだし・・・」



春香「ほんとにないのか!?」



小狼「ない、んだ・・・け・・・ど」



春香「良く考えたら、こんな子供が暗行御吏なわけないな」



サクラ「あめんおさ?」



春香「暗行御吏は、この国の政府が放った隠密だ。それぞれの地域を治めている領主達が、私利私欲に溺れていないか。圧政を強いていないか。監視する役目を負って諸国を旅している」



モコナ「水戸黄門だー!!」



小狼「みと?」



春香「さっきから思ってたんだけど。なんだ、それは!?なんで、まんじゅうが喋ってるんだ?」



モコナ「モコナはモコナー!!」



ぴょーん



春香「わっ」



ファイ「まぁ、マスコットだと思ってー。もしくは、アイドル?」



モコナ「モコナ、アイドルー」



ファイ「オレ達をその暗行御吏だと思ったのかな。えっと・・・」



春香「春香」



ファイ「春香ちゃんね。オレはファイ。で、こっちが小狼君。こっちがサクラちゃん。こっちがツバキちゃん。で、そっちが黒ぷー」



黒鋼「黒鋼だっ!!」



ツバキ「プフッ」



黒鋼「笑ってんじゃねぇ!」



ファイ「つまり、その暗行御吏が来てほしいくらい、ここの領主は良くないヤツなのかな?」



春香「最低だ!それにあいつ、母さん(オモニ)を・・・」



ゴオオオオオ



ツバキ「ん?」



ファイ「風の音?」



春香「外に出ちゃだめだ!!」



ツバキ「え?」



次の瞬間、突然の強風が春香の家を襲う



モコナ「きゃー、飛ばされるー」



ツバキ「きゃあっ!」



小狼はサクラを抱き締め、ファイはモコナを掴んで飛んでいかないようにした



ふわりと体が浮いたツバキの腰に片腕を回し、抱えるようにして黒鋼が抱き寄せる



突然現れ、突然消えた風・・・



ファイ「自然の風じゃないね。今の」



春香「領主だ!あいつがやったんだ!!」
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