ツバサ・クロニクル

□御伽の国
10ページ/10ページ




「おい!来ないぞ!!」



先に城の外に出ていた彼らは、小狼とサクラを待っていた



「川の流れが速くなった!」



グロサム「これ以上流れが速まると、渡れなくなるぞ!」



「本当にあの2人来るのか!?」



ツバキ「うるっさいわねぇ。ちょっと静かにしてくれるぅ?」



黒鋼・ファイ「「・・・・・・」」



黒鋼「・・・来た」



ザバ



ファイ「ひゅー♪『やった』ね−−小狼君」



ツバキ「【ホッ】・・・」



黒鋼の手を借りて水から上がってきたのは、サクラを抱えた小狼だった



「先生は!?」



小狼「わ・・・かり、ません」



ファイ「追って来ないってことは・・・・・・城と運命を共にした・・・かなぁ」



気を失っていたサクラが目を覚ますと、優しく微笑んで子供の頭を撫でる仕草をする、エメロード姫がいた



エメロード《子供達を助けてくれて、本当にありがとう》



彼女が手をかざすと氷が溶け出し、羽根はサクラの中に戻っていった



エメロード《この羽根を、貴方に返せて良かった。
気を付けて。誰かがずっと、貴方達を視ている》



サクラは羽根が戻ったことで、ツバキも安心感からか、緊張が溶けたからか



2人は眠ってしまい、その言葉の意味を聞くことは−−出来なかった




















「本当に良かった!」



「どこも痛いところはない!?」



「心配したのよ!」



無事に親元へと帰された子供達



その再会の様子を、2階の窓から見下ろすモコナが振り返る



モコナ「みんな、嬉しそう!」



ファイ「カイル先生は子供達を傷つけたりはしなかったみたいだしねぇ」



黒鋼「羽根を掘り出すための労働力だからな。わざわざ怪我させたりはしねぇだろ」



ファイ「しかし、カイル先生が催眠術を使ってたとはねぇ。でも、サクラちゃんとツバキちゃんが見たっていうエメロード姫は、なんだったんだろう?先生、2人にも催眠術掛けてた?」



小狼「そんな様子はなかったと思います」



ファイ「じゃあ、羽根の力ー?」



モコナ「ソレだったら、モコナがわかったと思う」



小狼「サクラ姫とツバキさんが視たのは、エメロード姫の(スピリット)のようなものかもしれません。サクラ姫は小さい頃から、死んだ筈の人や生き物を視たり、話すことが出来たそうです。もしかしたら、ツバキさんも同じなのかもしれません」



ファイ「玖楼国の人って、みんなそうなのー?」



小狼「いいえ。おれが知る限り、今は神官様とサクラ姫だけです」



ファイ「小狼君はー?」



小狼「【ふるるるる】」



ファイ「黒るーは?」



黒鋼「んなもん視えねぇ」



ファイ「オレもそっちの力はないなぁ」



モコナ「幽霊だったら、モコナ視えないし感じない」



ファイ「そうなんだー」



モコナ「幽霊とか視えるのは、黒くて、青いお耳飾りのモコナなの♡」



黒鋼「なんかいたな。黒いまんじゅうみたいなのが。役に立たねぇな、白まんじゅうは」



モコナ「モコナ頑張ったもん!大活躍だったもん!!」



ぽかぽかぽか



黒鋼を叩くモコナを、冷や汗を流して見ている小狼



ふと外を見ると、本当に嬉しそうにしている町の人達、そして



嬉しそうに笑顔を見せているグロサムが、小狼の視界に入った



ツバキ「【ひょこっ】不器用よねー、あの人」



小狼「うわっ!?ツバキさん!いつの間に・・・!?」



ツバキ「町長さんから聞いた話。カイルが掛け合う前から、土地代は豊作になるまで待つって、町長さんに言ってあったらしいわ」



小狼「え?」



ツバキ「それとこの宿。ここも元はグロサムさんのものだったけど、病院にするならって、無償で貸してたらしいわ。子供達が姿を消してからも、徹夜して探してたんだって。なんだかんだで、あの人は町の人達のことを一番に考えていたのよ。ほら、ね?不器用な人だと思わない?」



小狼「ツバキさん・・・・・・そうかもしれませんね」



モコナ「サクラが起きたー!」



小狼「大丈夫ですか!?」



サクラ「ずっと・・・誰かが視てる・・・って、どういうこと・・・?」



ツバキ「!」



小狼「姫?」



サクラ「もう一度、エメロード姫に会わなきゃ・・・!」



借りた本と記録、置き手紙をその部屋に残し、彼らは宿から静かに出て行った



正しいエメロード姫の伝説を、語り継いでほしい、と−−










サクラ「・・・・・・だめ。エメロード姫・・・どこにもいない・・・」



モコナ「前に、侑子言ってた。心配なことがなくなったら、霊はどこかへ行くんだって」



黒鋼「成仏する、ってことか」



ツバキ「それが一番近い言い方かもね。私も、もしかしたらとは思ったけど・・・やっぱり逝った後かぁ」



ファイ「よっぽど子供達のことが心配だったんだねぇ、金の髪のお姫様。けど、エメロード姫がサクラちゃんとツバキちゃんに教えてくれた、『誰かがずっと視ている』っていうのは、どういう意味なんだろー」



小狼「もうひとつ、わからなかったことがあるんです。カイル先生はどうして、あの城の地下に羽根があると知ったんでしょう」



黒鋼「本にあったとかじゃねぇのか」



小狼「グロサムさんに聞きました。羽根がエメロード姫の亡くなった後、どこにあるか書かれた本はないそうです。それに、そんな伝承もないと」



ファイ「この旅にちょっかいかけてるのがいるってことかー」



小狼「『誰か』が」






疑問と疑念を抱いたまま、彼らは次の世界へと旅立つ






さて、今度の行き先はどんな世界で−−






どんな困難が待ち受けているのか−−?








































「御伽の国」ジェイド国編、完
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ