甘くて短い
□砂糖とカフェオレ
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ふわっとコーヒーの香りがした。
その心地の良い音と香りに目が覚めた。
「あ、やっと起きたか」
彼の声が聞こえた。
「おはよう・・・」
「おはよ。お前、朝起きるの遅すぎ。いくら日曜で、俺様がお休みでももうちょっと早く起きろよなー」
「ご、ごめん」
まあいいよ、と顔を綻ばせる彼はどことなく機嫌がいい。
その間に私は、コーヒーに砂糖を入れる。ブラックコーヒーは、私にとって刺激が強すぎるのだ。
「名無しさんの寝顔を見れたことだし。ひとまずそれで許してやるよ」
彼の思いがけない言葉に一瞬、飲んでいたカフェオレを噴き出しそうになった。
普段の彼なら、こんな恥ずかしい言葉を言わないのに。
ましてや朝なのに。
「しょ、翔ちゃんどうしちゃったの・・・」
噴き出しそうになったカフェオレをテーブルに置く。
当の本人は、まだ機嫌が良さそうだ。
「ん?ああ、ただなんとなーく」
最近の世の男子は、なんとなーくでそんな小っ恥ずかしい言葉を言えるのか。
彼がアイドルだから・・・なのか?
「とにかく、そんな恥ずかしい言葉を朝に言うのはやめて・・・心臓に悪い」
「ん?恥ずかしい言葉・・・?え、俺、恥ずかしい言葉言ったか?」
まさかの自覚なし。天然とは、つくづく恐ろしいものだと実感したある日の朝。
朝の彼には気をつけよう。
(本当に自覚ないの?)
(なんの事だよ)
(ほら、寝顔見てたとか・・・)
(え、あ、うわああ!!)
(今更!?)