SAYAMILKY

□北川謙二
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美優紀side





「私達が付き合ってんのみんなにバレちゃったらあかんから、仕事ん時はあんまりベタベタしーひんからな」



それが彩ちゃんに言われた、私達が付き合う条件やった。

私は彩ちゃんと付き合えるなら、みんなに人気の彩ちゃんを独り占めできるなら、そんな条件なんてことなかった。



そう思ってたのに…





「あはははっ!!」



彩ちゃんの笑い声が聞こえてくる。



今日はNMB全員でのお仕事。
私が彩ちゃんと付き合えるようになってから、彩ちゃんと会うのは初めてやった。

久々の全員集合やから、彩ちゃん嬉しいねやろな。
いろんなメンバーのところに行って写真を撮ったり、くだらんことしてはしゃいだりしてる。

今日の彩ちゃんの私服
黒のライダースジャケットに赤いスカート。
髪型もちょっとボーイッシュにセットしてて。


…カッコいいなあ…


いつのまにか私は彩ちゃんに釘付けになっていた。


あれ?
彩ちゃんはほぼメンバー全員に声かけて回ってるのに、私のところにだけ来てくれない。





なんなん彩ちゃん
そんなあからさまに避けんくてもいいやん




もしこれからも
仕事で会ってる時一緒におらへんのやったら
私ら付き合ってるって言わへんくない?

2人で会える時間なんかほぼあらへんねんから


そう思ってちょっとイライラしてると、





「………おはよ」





彩ちゃんがすれ違いざまに小さい声で言った。





なんや、避けてたわけちゃうやん………
でも明らか他のメンバーとは態度が違うよな。



あ、もしかして彩ちゃん照れてるん…?



すれ違うときちょっと顔赤かったような…


もう…なんでそんな可愛いねん…。


彩ちゃんが愛しくて仕方なかったけど、私はちょっといじわるしてみようと思って

彩ちゃんのおはようを無視してみた。


彩ちゃんどんな反応すんねやろ…。




チラッと彩ちゃんを見ると、
誰が見ても分かるくらい悲しそうな顔をしていた。


えっ……彩ちゃん……
ちょっと私が無視しただけで……?
彩ちゃんのあんな顔初めて見た………



私はとてつもない罪悪感に追われた。


はぁ……変な意地張らへんかったらよかった。
…どうしよ。





…あ、そういえば今からの収録、
久々の「北川謙二」歌うんやった。





彩ちゃんと抱き合う場面がある。

……ちょっと恥ずかしいけど…




今日は彩ちゃんのこと思いっきり抱きしめたろ










収録が進み、次は「北川謙二」を歌う。

収録中も彩ちゃんはどことなく元気がなくて、
無理して笑顔を作ってる感じやった。


……彩ちゃん…ごめんな。
私がちゃんと責任とるから。







イントロが流れる。
彩ちゃんは音楽が流れた瞬間、満面の笑みで踊る。



彩ちゃん、ほんまに音楽好きやねんな。

音楽してるときの彩ちゃん、大好き。






サビに入って、あの場面が近づいてきた。



『あれが北川謙二だ』




『君はそっと呟いて』


彩ちゃんがさっき私に
おはよう
って私にそっと呟いたのが頭に浮かぶ。





『僕の反応楽しんでる』



それを無視して、彩ちゃんの反応を
楽しみにしてた私。






『まさに北川謙二だ』



『僕はちょっといらついて』




そして、彩ちゃんと向き合う。



彩ちゃんはじっと私の目を見て
優しく微笑んだ。





無視した私を見て
イラつくんじゃなくて、落ち込んでた彩ちゃん。
それでも今こうして向き合うと
私に微笑んでくれる彩ちゃん。



愛しさが溢れる。





『今の君をもう一度』


彩ちゃんが私の方に歩み寄る。
私も彩ちゃんに負けないくらいの笑顔で
彩ちゃんの方へ歩く。



『抱きしめる』


彩ちゃんが私に抱きつく前に
私は彩ちゃんをきつく抱きしめた。

彩ちゃんはちょっとびっくりしてたけど
それでさえ愛しくて、
私はもっと腕の力を強くした。


そして


彩ちゃん 大好き



耳元でそう言った。




彩ちゃんはちょっと顔を赤くして
私におでこをくっつけた。


私は耐えきれなくて

思わず彩ちゃんにキスしてしまった。




彩ちゃんはよっぽど恥ずかしかったのか、
顔を手で覆った。
メンバーもびっくりしていた。




でも私は、彩ちゃんに愛を伝えることができた嬉しさに満足してたから、
そんなの全く気にならへんくて、
そのまま笑顔で歌い続けた。











「こらー!!みるきー!!!」

収録が終わった後、彩ちゃんが私のところに来た。
仕事の時は「みるきー」って呼んでくる彩ちゃんでさえ愛しい。
ちゃんと「美優紀」って呼ぶときとの区別つけてんねんな…って。



「まさかちゅーされると思わへんやん!」



「彩ちゃん、嬉しかってんやろ?
顔に書いてるで……?」



「…っ…
……みるきーが無視してきたから……
私なんかしたかな?ってずっと考えてて……」




彩ちゃんは照れながらも正直に
私に思いを伝える。




「………彩ちゃんはなんもしてへん」





こんなに可愛くて、かっこいい愛しの人に
私の嫉妬なんかで迷惑かけたくないな
と思った。

どんなに仕事の時に一緒におれへんくても、
彩ちゃんが他のメンバーと仲良くしても、
それでもいいやんって。

彩ちゃんの、
私にしか見せへん、私だけが知ってること
いっぱいあんねんから。

それで十分やん、って思った。



今度は私からおでこをくっつける。



「……………美優紀………?」


「彩ちゃん…まだメンバー近くにいるで?」


「…………今は…美優紀って呼びたい。」




「彩ちゃん、大好き」



彩ちゃんは、そのままの彩ちゃんでいてな?



「私も。美優紀。」



彩ちゃんはちょっと照れたように、
下を向いてクシャッと笑う。



ほら、やっぱり。







彩ちゃん……


これからもずっとその笑顔
私にだけ見せてな………?
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