SAYAMILKY

□夕日に染まるもの(裏)
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アントニオside





あたしは、留年の危機を免れるために
夕方の誰もいない教室で勉強していた。





普段勉強なんかやらへんから、
椅子に座って机に向かってるだけでも肩がこる。

ケンカのことやったらどんな問題が出ても
絶対解ける自信あんのに…
勉強となると全然分からへん。






あいつが来るまでは1人で頑張ろ。













しばらく1人で全く分からへん問題と格闘していたら、

教室のドアがガラッと開いた。





「………進んでんの?」




と言って、あいつが中に入ってきた。




「んー……まあまあな……」



あたしが勉強できひんの知ってるのは
こいつだけやけど、
それでもやっぱり恥ずかしい。




こびーはゆっくりあたしの方に近づいてきて、
あたしの隣に椅子を置き、座った。



「……教えてほしいねやろ………?」



こびーはわざと顔を近づけて言う。



「……あんたにかまってる暇ないねん……」



あ、あかん……
また思ってもないこと言ってしもた……


すると、こびーはあたしの耳元で


「……そんなん思ってないくせに……」


って言ってきた。

ばれてるやん………


勉強はこびーの方が強いねんもんな…
こびーとのやりとりでも頭の良さが分かる。

でも、教えてって言うのはあたしのプライドが許さへん……



「あんた…勉強教える気ないやろ……
………口実にしてるだけやんな………?」


教室で2人きりやねんもん

勉強教えるとか言って
ほんまはやらしいこと考えてるんや、どうせ…







「…………口実って…………何の………?」




こびーはあたしの肩にあごを乗せた。


「…アントニオ…
…もしかして…変なこと考えてる…?」


そう言ってこびーは
いきなりあたしの首に舌を這わせてきた。



「………こういうこと………?」




「っ! こびー…っ…あかん…
……今日は勉強だけするねんから……」



いきなりなにすんねん!
変なこと考えてるんはあんたやろ…!




「勉強教えてくださいって言わんとやめへん」



こびーは、すぅっと首筋を舐める。



くそっ……こびーめ……

あかん…なんか変な気分になってきた……
このままじゃあかん……





「こびー……べ、勉強…………教えて……?」



プライドなんてもう気にしてる暇はなかった。



「ふふっ……素直になったら可愛いねんな」



「…うるさいわ」



なにニヤニヤしてんねん……


こびーはチュッとあたしの首に口づけて
ようやく勉強の準備を始めた。

ほんまに……悪いやつやで………









「……どこが分からへんの………?」


勉強の準備を終えたこびーは
ようやくあたしにそう聞いてきた。


こびー……切り替え早いな……



ただ……



「なあ………顔近いねんけど………」



気が散るねんて………ほんまに………



「またそういうこと考えてんの…?

………勉強に集中しやなあかんやん……」



こびー……顔近いの無意識なん………?

それともわざとやっててとぼけてんの……?

ほんまに悪いやつや……



「…………ここ…この問題……分からん」



はあ…
…あたしがこびーの言いなりになってる……

悔しいな…



「アントニオ……こんなんも分からへんの…?

ここはな、この式使うねやんか。ほんでな…」



一回ばかにしてこんでええねん……

でも…教え方はさまになってるな……




てゆうか……





こびーって
横顔綺麗やな……

いや、もちろんどっから見ても綺麗やねんけど

ってなに考えてんねん…っ!


まあでも
ヤンキーとしてしかいっつも見てへんからな

こんな近くにいるのもなかなかないし……



気がついたらあたしは
こびーの顔をずっと見つめていた。


そんなあたしをよそに………



こびーめっちゃ真剣に説明してるやん………



「……ってやるねん。どう?分かった…?」



こびーが目を合わせてきた。


あかん……なんも聞いてへんかった………

でもめっちゃ真剣に教えてくれてたしな



「う、うん……たぶん分かった………」


「ほんま?やっぱ私の教え方上手いねんな!」



めっちゃドヤ顔でそう言うこびー……



「じゃぁ、もっかい自分でやってみて?」


「えっ!…んー……分かった…」





こびーが一生懸命説明してくれた問題に再び取りかかる。

でも案の定、説明を全く聞いてへんかったから
すぐにペンを持つ手が止まった。




「……ん?
……また分からへんくなっちゃった……?」




こびーがまた顔を近づけてきた。

あぁ…慣れへんな……




「んー……分からんわもー……むり」



「もー…諦めたらあかんやん……

…もっかい教えたるから……な……?」



急に優しくなるやん…こびー……

いや、あたしに勉強教えてくれてる時点で
もう優しいか…




こびーはまた説明を始めた。

今度はさすがに真剣に聞かなあかんな

でもやっぱり気がついたら
こびーの顔を見てしまってたから、
慌てて問題に視線を戻す。




「……ほんで、こうなんねん。わかった?」




んー………だいたいは理解できた気ぃするわ。




でもそう言ったら

この2人だけの時間が終わってしまう。


なんとなくそれが嫌で、



「……んーまだ分からへん………」



わざとそう言ってみた。

そしたらこびーは困った顔をして



「はぁー?まだ分からへんの??」



と言った。
ちょっと怒ってるし…



「もっかい教えて………?」



「ほんましゃーないな…あと1回だけな…?」



そう言って仕方なく説明を始めたこびー。





あたしは、何回説明されてもやっぱり
こびーをじっと見つめてしまっていた。

なんやろ…これ……
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