Autumn daffodil

□少しの変化
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「お兄ちゃん、本当によかったの?」
「何が?」
「……さっき一緒にいた人。……昨日お店で見たけど……デートじゃなかったの?」
「あぁ、倉本のことだろ?さっきも言ったけど彼女じゃねぇし、デートでもねぇよ」
「……だって……お店が休みなのにこんな遅くまで……」
「うっかり薬剤仕入れんの忘れててさ。買いに行くって言ったら、倉本も買いたいものあるから一緒に来るって言って店の仕入れしてただけだ。朝とかはオレが用事あったから夕方から買い出し行ったんだよ。ま、オレのに付き合わせたってのもあるから、夕飯は食ったけどな」
「………そっか」
莉桜は、聞きたくないのにどうしても気になってしまい、自分でも無意識に質問していた。
一緒にいる姿を見て胸がチクリと痛んだ気がしたが、その意味さえまだ気付いてはいなかった。


「ただいまー」
「おかえりー……あら、雄士君じゃない。どうしたのー」
「こんばんは。莉桜とバッタリ会いまして。送ってきました」
「あら、やだ。ごめんねぇ……本当にありがとう。ちょっと上がっていく?」
「いえいえ、オレはこのまま帰ります。あ、そうだ莉桜、明日大学何時から?」
「んー?明日は1時半からだから、11時前に出よっかなって思ってる」
「誰かと一緒?」
「ううん、一人。どっかでランチしようと思って」
「じゃあ、11時に迎えに来るから送ってやる。昼飯付きでな」
「えっ……!?でも……」
「大荷物抱えてフラフラ行く気か?」
「これは家で使うやつも入ってるもん」
「あら、莉桜いいじゃないの。せっかく雄士君が言ってくれてるのに」
「だって迷惑じゃん」
「迷惑なら最初から言ってねぇよ。明日も休みだし、オレも荷物店に置きに行くしさ。車のが便利だろ?」
「休みって知ってるから言ってんのに……ほんとにいいの?」
「もちろん」
「………じゃあ、お願いします」
「了解。じゃあ、また明日な、おやすみ」
「……おやすみなさい」
ポンポンと頭を撫でられ、恥ずかしさと嬉しさが入り交じったような顔で雄士を見上げたあと、帰っていく背中をしばらく見送っていた。

「雄士君って莉桜にメロメロよねー、あー羨まし。」
「はぁ!?お母さん何言ってんの!?お兄ちゃんは……」
「はいはい。いい加減、その『お兄ちゃん』やめてあげなさいよ。雄士君可哀想よ?………実際どうなの?アンタ、雄士君のことどう思ってんのよ」
「どうって………まぁ、カッコいいとは思うけど……」
「ほぅほぅ」
「………っ、もういいでしょー?お風呂入るよ!」
「クスクス。付き合うようになったら教えてよねー」
「なっ……そんなんじゃないってば!お母さんのバカ」
「まぁ怖い」
母親の笑い声を背に、莉桜は浴室へと消えていった。

「お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん……」
莉桜は撫でられた頭に触れながら、言い聞かせるように呟いた。
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