Autumn daffodil

□少しの変化
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「え?……あっ、お兄ちゃん!偶然だねぇ」
莉桜が振り向くと、雄士と倉本の姿があり、雄士の姿を見た瞬間、莉桜は顔を綻ばせた。
だが雄士はすごい剣幕で、莉桜たちの方に歩み寄ってきた。
「おまっ……今何時だと思ってんだよ!?」
「え……だってまだ九時過ぎ……ってか、もう帰るとこ……」
「あー!もう!!おばさんたち知ってんの!?」
「遅くなるとは言ってるよ?栄子たちと買い物行くって言ってるし」
「だからって……明日大学は?」
「昼からだよ?だから、明日使う道具とか材料とかいっぱい買っちゃって……村岡くんに持ってもらってるんだけど……」
「家まで送る」
「は!?いやいや……お兄ちゃんにそんな事してもらわなくても………」
「今から帰るとこだったんだろ?問題あんの?」
「大アリだよ!ほら、スタッフさんでしょ?……もしかして、お兄ちゃんの彼女……?待ってるみたいだよ?」
「倉本は彼女じゃねぇよ」
莉桜は少し顔をずらして、倉本の方を見た。
倉本は、足早に莉桜の方へ行った雄士を追いかけることができず、少しだけ離れた場所でこちらを伺っていた。
二人のやり取りに少しだけ顔をしかめながら莉桜を見ていたが、その場から立ち去ることも出来ずにいたのだ。
「とにかくオレが莉桜を送るから。倉本、悪ぃな。店寄ろうと思ったけどこういう事だから。今日は付き合ってくれてありがとな。また店で」
「えっ?……あ、はい………」
「ほら、荷物貸せ」
「え……もう!あ、村岡くんありがと、荷物もらうね?……で、二人とも本当にごめん。お兄ちゃん言い出したら聞かないとこあるし……また明日ね」
「………お?おぅ……つか大丈夫か?これちょっと重いぞ」
「莉桜、そっちの荷物交換しろ。……村岡だっけ?悪かったな。それに君も」
「いえいえ、私たちのことはお気になさらず。じゃあ莉桜、また明日ね。村岡、送ってってよ」
「へいへい。どうせ方向一緒だし、最初からそのつもりだったよ。じゃあ、田鍋またな」
雄士は自分の軽い荷物を莉桜に渡し、村岡が持っていた袋を持つと、莉桜を促しながら帰っていった。
三人はその姿を見送っていたが、栄子がチラリと倉本の方へ視線を移すと、倉本は唇を噛み締めながらクルリと背を向け反対方向へと歩いていった。
「……あーあ、あのお兄さん罪作りな人だねぇ……。アレがいつも莉桜が言ってる『お兄ちゃん』……か。ま、あの人もある意味可哀想だけど……」
「ん?栄子どうした?…つーか、あの兄やんおっかねぇな。莉桜しか見えてねーじゃん」
「ほんとだよねー。ま、とりあえず私らも帰ろっか」
「へいへい」
そうして二人も歩きだした。
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