Autumn daffodil

□回顧と現在
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『シャンプーも終わり。………莉桜?』
声をかけても何の反応もなく不思議に思いながら目元にかけていたタオルを外すと、スヤスヤと穏やかな寝息をたてて眠る莉桜の姿があり、雄士は可愛いなーと思いながら、ついほっぺたをツンっとつついた。
『莉桜ー?起きてー?』
プニプニとほっぺをつついていると、ようやくうっすらと目を開けた莉桜と目があった。
『んぅ……?お兄……ちゃ…?』
『シャンプー終わったぞ?乾かすから起きて?』
『……はーい……』
目をさすりながらゆっくり起きる体を支えながら、雄士は莉桜を椅子まで手を引いて連れてきた。
ドライヤーをかけている間もまだ眠そうな顔をしている姿を笑いながら眺めながら、雄士の好きなように髪をまとめた。
『よし、全部終わったよ。……うん、可愛くなった』
『うわぁ……お兄ちゃん、ありがとー!!』
『……っ、!?おぅ……』
満面の笑顔を向けられた瞬間、雄士の胸がドクンっと高鳴った。
『よかったわねぇ、莉桜。雄士君ありがとう』
『あ……いえ。こちらこそありがとうございました』


ーピピピピ……ー
「……………めっちゃ懐かしい夢見た……。はぁ………」
雄士は体を起こすと、少し火照った体を落ち着かせるためシャワーを浴び、莉桜を迎えに行く準備をはじめた。

「お兄ちゃんお待たせ!」
「おぅ。荷物はこれか?」
「うん。あ、ちょっと重いよ?」
「大丈夫だって。……おまっ、これ持って歩いて行くつもりだったのか!?」
「う……何とかなるかなぁって……」
「はぁ……やっぱ車出して正解だわ」
荷物は袋二つあり、トランクに入れようと両手で持った瞬間、ズシッとした重さが雄士の腕を襲った。
雄士的にはどうってことない重さだが、莉桜がこれを両手に持って30分ほど歩くには少々ツラいものがあるように思えた。
「じゃあ、行くぞ」
「お願いしまーす」
荷物を入れ莉桜を助手席に乗せると、莉桜が行きたいと言っていたカフェへと向かった。
店内とテラス席がある店で時間も昼には少し早いこともあり、お客もまばらで空いていたので、二人はテラス席へと移動した。
「どうしても、ここのホットサンドとパンケーキが食べたくって……お兄ちゃんゴメンね?」
「気にすんな。食えるだけ食ってよこせ。その為にオレ連れてきてんだもんな?」
「むー。だってぇ……」
ひとつの料理が結構ボリュームがあり、ホットサンドだけでも全部は食べきれない量であるため、残った分を食べてもらいたくて莉桜はあえて雄士をこの店に連れてきた。
雄士もそれをわかっているため、ただ美味しそうに頬張る莉桜を笑って眺めていた。
「………ふはっ。莉桜、子供かよ。口元付いてんぞ?」
「ん?…………っっ!!?」
雄士は、莉桜の口元についたクリームを手を伸ばして指で拭うと、そのまま自分の口へ運んだ。
ペロリと指を舐める仕草に、莉桜はカァっと顔が熱くなるのがわかった。
(……な、に今の……ヤバい……。なんか…顔熱い)
「莉桜?どうかした?」
「………っ、ううん、何でもない……」
莉桜は、心臓がうるさくなるのを必死に抑えながら食事を続けたが、味わう余裕はもうなかった。
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