Catchfly

□嫉妬と不安
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「じゃあ、行ってくる」
「おぅ、場所大丈夫なんだな?」
「ん、たぶん。塾は駅近だし…」
「あ、雍娜。こっち向いて」
「んー、何?」
靴を履いて、玄関のドアに手を伸ばしかけたときに名前を呼ばれたから振り向くと、軽く舷に抱きしめられた。
「わかってんな…ちゃんと帰ってくるんだぞ?」
「……ん…わかって……んんっ、ふっ……
んぅ」
最後まで返事を聞かずに、唇を塞がれて。
ぬるりと入ってきた舌にあっけなく絡め取られて、背中がぞわりと粟立った。
何度もなぞられて、最後にチュッとキスをして離した舷の顔はすごく笑顔で、私は顔を真っ赤にしながら睨み付けるしかなかった。





「…………ふぅ、やっと終わったぁ……」
「おつかれー、雍娜!ねぇ、今からみんなでご飯行くんだけど、どう?」
「どこまで?」
「PALかなぁ?ね?」
「あぁ、葛西も来いよー」
塾が終わって、学校のクラスメイトたちに声をかけられ、夕飯の時間だし、まぁご飯くらいならって思って外に出た。

「あれー?城崎君じゃん!偶然ー!」
「………え?」
まさか居るとは思わなかった舷が、向こうからこっちに向いて歩いてきてて。私はどうしたらいいかわからずに、目線を逸らしてしまった。
「よぉ、今終わったのか?」
「そうなの。あっ!城崎君も一緒にご飯どう?今からみんなでPAL行こうってなってさ!」
「舷も来いよ!どーせ暇だろ?」
「どうせとか言うなよな!何、全員行くの?」
「おぅ!ここ全員!」
「なら行こうかなー」
トントン拍子に話が進んで、結局舷も含めて10人ほどでご飯に行くことになった。
道中は何事もなく、私も他の子達とワイワイ喋りながらお店に向かった。
PALはいわゆる大型ショッピングモールで、中にはいろいろな店舗があって、その中のファミレスに足を運んだ。
人数が多いから、2つ席を借りて。
ホッとしたのは、5人ずつ座ったテーブル席は前後で並んでいて、舷と違うグループになった上に背中を向けている状態だったから、あまり意識しなくて済んだってことだった。
抱かれた日から、初めて他の子と会ったから、今まで舷とどう接してたかわからなくなっていた。
だから最初は戸惑ったけど、ご飯を食べ始めてたら意識は今一緒にいる4人だけになってた。
たまたま隣に座ってたのが、すごく仲良くしてる男子…山辺くんだったから特に安心しきって、私はいつも通りにいろんな話をしていた。

「………つかさー、あんたらメッチャ仲いいよねー?ずっと思ってたんだけど。」
「そーいや、そうだよな?」
「ん?1年からずっと同じクラスだからかなぁ?ね、山辺くん?」
「あぁ、そうだな。まさか塾まで一緒とは思わなかったけど」
「ま、それは仕方ないね。偶然偶然!」
「………アンタたち、付き合ってんの?」
『まっさかぁー!』
向かいに座ってた香苗に言われて、声を揃えて否定したもんだからますます疑われて、私と山辺くんは顔を見合わせて笑っていた。
そんな時、後ろから突然聞こえて話に私は息を呑んだ。

「………で?城崎、彼女いるってマジ?」
「あ?どこ情報、ソレ……」
「あー、私も聞いたよー、結構有名な噂ー。まぁ、相手の方は年齢様々なんだけど……どれが正解?」
「なんだそれ……言いたくねぇなー…」
「いーじゃん、あ、もしかして宣言したら今みたいにモテなくなるのが嫌とか?舷、モテるしさ」
「るせーよ。好きでもねぇのにモテたって意味ねぇし……俺、一途な方」
「マジ!?なんか意外だわー。で?真相は?」
「るせー。………はぁ、深く立ち入るの禁止だぞ?大切にしてぇ奴がいる」
『…………』
「キャー、聞いた!?めっちゃカッコイイんですけどー!」
「何今の!モテる男の言うことは違うねー」
「今ので、アンタ失恋じゃん?」
「うー、言わないでよー……悔しいけど負けだー……」
舷の一言でみんなが騒ぎだし、私はなぜか胸が締め付けられる思いだった。
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