短編集T
□最後じゃない
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卒業なんて
ぶっちゃけピンと来なかった
別れなんだ、とはっきりわかった時には
もう卒業式は、目と鼻の先だったんだ。
「なぁゾロ・・お前、大学どこ行くの」
「明月大学。つっても、スポーツ推薦だけどな。」
「そうか・・」
高校卒業を控えた高3三学期の今日この頃。大学受験も終わり、誰もが束の間の休息に浸っている。
ゾロとサンジもその中の一人。二人とも大学も決まり、毎日を平穏に、否、退屈に過ごしている。高校二年の夏からずっと付き合っている2人も、違う大学へと進んでいく。卒業は、一つの別れとなるかもしれないのだ。
「でもよ・・お前、寮だろ?こっから明月なんて通えねぇもんな。」
「・・ああ。そうだ。」
幼い頃から続けてきた剣道という夢を伸ばすため、せっかく来た推薦を蹴るわけにもいかなかった。本当は、サンジと離れたくないから近くの大学に行きたいという気持ちも、少し、あったけれど。
「やべ、次一応HRあんだ。また後で会いに来るな、ゾロ。」
「ああ、また後で。」
教室から走り去っていくサンジを見て、ゾロは少し不安を感じていた。もし、この卒業をきっかけに、サンジと別れることになってしまったらどうしようか、と。
自分が寮に通う以上、恐らく卒業してしまえばめったに会えない。それどころか卒業まで4年間、全く会えなくなる可能性だってあるわけである。
そう考えただけで、全身から寒気が走る。そんなことは無いと信じたい。信じたい、けれど・・・。
「・・・駄目だ。こんなんじゃあ・・・。自販機でも、行ってくるか・・・」
ため息をついて、ポケットの中の財布を確認して立ち上がり教室を出る。心の中のもやもやは時間が経つにつれて良くなるどころか悪化し続けている。
自分はサンジが好きだ。男とか女とか全く関係なく彼という人間が大好きだ。距離が離れてしまうからと言って、別れたいとは全く思わなかった。
でも、もし向こうが同じ気持ちでなかったら?あの時・・通じ合わせたはずの気持ちが、冷めていたら・・・?
(・・ケッ!!アホらしい。こんなことでぐじゃぐじゃ悩んで・・おれは乙女かっつーの。)
次第に落ち着かなくなっていく心を無理やり押し付けるように、急いで階段を駆け下りてモールにある自動販売機に向かっていった。