Underground

□始まりは
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気付けば俺はまた彼女のことを見て…いや、追いかけていた、物理的に。目で追いかけていたとか、憧れて背中を追いかけていたとかではなく、追いかけていた。
俺は這寄、這寄 聡明(ことき そうめい)、高校一年生だ。
そして、今追いかけている少女の名は…あれ、なんだっけ。そうだ、そうそう魅島 唯乃(みしま ゆの)だ。こんなところによくもまあ生徒手帳が落ちてるもんだ。って、おいおい、これはあの子に話しかけるチャンス!?いや、落ち着け、俺は確かにあの子が好きだけど見ていたいだけなんだ、どこまでも、いつまでも。
はあ、ここまで説明すんの疲れたよ母ちゃん。そんなことを言いつつ俺はKONAMIのアーケードゲームであるjubeatをやりにゲームセンターへ行くんだけどね。
で、そんなことは置いといてなんであの子を追いかけていたのかというと、あれは二年前の四月の事…。
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中学1年をぼっちで過ごした俺はこのクラス替えを機に変わってやる!
ええっと、俺のクラスはと…。
無い、無いのだ、俺の名前があるはずなのに無かったのだ。それはまるで数分前まであった虫の死骸が虫達の手によってどこかへ持ってかれたかのように…。
「ねえ、君何やってるの?」
「君は?」
「私は魅島」
名前だけは聞いたことがあった。孤高にして悪女だという噂と共に。
しかし、この時点で俺は惚れた。はっきり言って惚れた。まあ、そんなことよりも自分の方が可愛かった俺は尋ねることにした、俺の名前がどのクラスにあったかを。
「俺の名前、這寄って言うんだけど見てない?」
「君の名前だったんだね、知らなかった」
彼女はニヒルな笑みを浮かべると、そう言った。
「え?君何か知ってるの?」
「知ってるも何もそこにあった名前消したの私だし」
2年1組の名簿を指した。
そこには、明らかに名前一つ分入るであろうところには、空白しかなかった。
「何でこんなことを…」
「ひとり人を消したかっただけなの、ごめんね」
彼女は愛想笑いでは迎えてくれなかった。そこには、彼女の笑顔からは誰に向けたかわからない憎悪が読み取れた。
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そこから2年、運悪く全て同じ班だった。しかし、班では俺同様に浮いてて、俺に話しかけてくることすら無かった。むしろ、何事も無かったようにその記憶だけ切り取られたように関わりはなかった。
で、なぜそんなやつを追いかけているのかって?そんなの簡単、見てればいい女だからだ。
見ず知らずの男子の名前を消すような女でも、一度は俺も助けてもらった。
またまた回想!
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あれは、去年のこと。とある国語教師が俺に校則違反のレッテルを貼り付け、そいつの御託を怪訝な態度で聞き流していたら、そいつは現れこう言った。
「20の保健の先生とヤったのはあなた、体育館裏で喫煙してたのは2組の小林君、色々とまだ学内での事件を彼は無関係であると言える証拠がありますよ?」
そう吐き捨て、まるで自分が追い込まれて切羽が詰まったかのように教師を睨めつけながら彼女は無数の写真を宙へ撒いた。
「どうしますか?このことを学校側へ密告しましょうか?」
「くっ…やめろ、俺が悪かった」
「なら、この男に了承を得ることね」
教師は二度と俺にちょっかいを出さなくなった。国語と数学で学年3位を取っただけで大人にけなされるこの世間に苛立ちを覚えた。
「なあ、なんで俺のことを庇ってくれたんだ?」
「興味本位で、よ。それに、あの教師は前々から気に食わなかったの」
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そんなこともあってか、それ以来からか、俺は彼女を追いかけている。
ストーカーとか人聞きの悪いこと言わないでね!!
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