無限の現代神話
□弐話
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「死ね…死ね…皆死ね…」
少年は地面に転がる迷彩服を着たオセアノスの隊員を痛めつけながら呟いた。
手を振り下ろすたびに血飛沫が舞い、少年の学生服に滲む。
「まだ力が足りない…。宗近くんを殺せる力をくれるって言ったのに…。傷一つ付けられなかった。ムカつく…イライラする…死ねばいい…皆死ねばいい。…死ね!」
少年がトドメを刺した時、オセアノスの隊員は虚ろな目をして呻き声すら上げなくなった。
少年は震える自分の手を見つめた。
「…グレードアップしてもらったけど、今度こそ本当に大丈夫なのか?」
震える手は手首まで赤黒く染まっていた。
「はぁ…こいつら、もう殺し甲斐がないや」
少年が死体を見下ろし溜息をついた時、辺りに聞きなれない低い音が響いた。
「この音…銃の音じゃないな…チェーンソーか?」
少年は禍々しい粒子を纏って一度姿を消し、見晴らしのいい電柱の上へと移動した。
見渡して音がした場所を探すと、少し離れた袋小路に人の姿があった。
転がる死体の中心に一人の少女が佇んで、華奢な身体には似合わないほど大きなチェーンソーを抱えていた。
少年はそれを見るとニヤリと笑った。
「いいね…ちょうどいいよ…」
少年はピンクのワンピースを着た長いおさげ髪の少女の傍へ降り立った。
「おい!そこの女!」
「な、なんですか…?」
突然背後に現れた少年に少女は怯えて困惑の表情を見せた。
そんな少女の様子を見て少年は更に詰め寄った。
「こいつら倒したの君だろ。なかなかやるね」
「や、やめて…!」
少女は青ざめて後ずさる。
「おいおい、何怯えてるんだよ。君だって十分怖い奴だよ」
「そ、そんなこと…してません」
「…何?僕の事舐めてんの?さっき見てたんだよ?」
「やめてください…お願い…」
「とぼけんじゃねぇ!」
痺れを切らした少年は少女を突き飛ばした。
突き飛ばされた少女は地面に手をつき、俯いたまま唇をヒクヒクと動かした。
「ッチ。…っるせえな」
少女はそう呟いてチェーンソーを持ち直し、エンジンを始動した。
「は…?」
さっきまでか弱い少女だった彼女の口から出た低い声に少年は耳を疑う。
少年が次に瞬きをした時、後ろの塀へ突き飛ばされ、チェーンソーの音と共に少女の鬼のような顔が目の前にあった。
チェーンソーは少年の脇腹のすぐ横にあり、凄まじい音を立てて後ろの塀に食い込んでいた。
それを見て少年は冷や汗を流した。
「おい、君ってまさか…」