無限の現代神話
□十九話
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嘉地と別れて辿る帰り道。
何とも言えない焦燥感に近い何かに悩まされた。
気に入ってる作家の本も読みたくない気分だった。読んでも気分が優れるように思えなかった。
あんなニュースが流れるのは最近になってからだった。魔女狩りという言葉が頭にこべりついて離れない。
「君君君」
後方からのそんな呼び声に振り返る。
「魔女がどこにいるか知ってるかな。急用なんだ。友達が大変で治療してほしいんだ」
話しかけてきた時代遅れな山高帽を被った、痩せた背の高い男はヘンテコな声をして早口で話す。
俺は男に不審な目を向ける。
「それで、魔女はどこにいる?」
男は魔女を探している。
俺は一瞬考えて家とは違う方向を示した。
俺の母親をあてにされては困る。安易に居場所を教えられないと思った。
男は俺が差した方角を見て、早口で礼を言ってまるでミュージカル映画の俳優のように機嫌がよさそうに歩いていく。
そんな姿を奇妙に思いながら振り返り、帰ろうとした。しかし違和感を感じる。何かが頭に引っかかった。
そうだ。俺が差した方向は、もう一人の魔女。陽菜子の叔母が住んでいる魔女の家だ。
しまった!
慌てて男を引き留めようと振り返る。
しかし男の姿はもうそこにはなかった。
*
「集会?叔母さん、この『集会』ってなに?」
陽菜子は近日の予定表に入ってる集会の文字に疑問を示した。
「あぁ、それね、今度魔女の交流会があるのよ」
陽菜子の叔母は陽菜子と同じハーフアップの黒髪をしている。
彼女は少し大きめのペンションだった建物を所有し、そこで魔女として異形者鎮圧部隊の回復や治療などの活動をしていた。三角の屋根に大きな窓。周りは木々で囲まれ、それは立派なペンションだった。
そんなペンションで学校を終えた陽菜子と叔母はしばしば談笑していた。
「魔女の交流会…!」
目を輝かせる陽菜子に叔母の麻衣子は優しく微笑む。
「陽菜子ちゃんも来る?暗くなってからなんだけど…陽菜子ちゃんは強いから大丈夫よね」
「もちろん!前言ってた友達も連れて行ってもいい?」
「うーん。そうねぇ、今回はちょっと堅苦しいからねぇ…お友達はまた今度。陽菜子ちゃんにはお茶出し手伝ってもらいたいの」
「…そっか」
陽菜子が残念そうに肩を落としたとき、玄関のベルが鳴った。