無限の現代神話

□拾話
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【前回のあらすじ】
黒蜂の超越した力に圧倒され、負けてしまった陽菜子。
負傷した宗近を置いて花園は逃げた。


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十年前、実験施設に売られた幼い少女に研究者たちは注目していた。
透視、スプーン曲げ…当時バラエティで人気だったマジシャンにできることは少女には容易くできた。子供がイカサマをできるはずがなく、実験を繰り返していくたびに少女の超能力への信憑性は高くなっていった。
しかし彼女に対するテストは日に日にエスカレートしていく。
異常な性癖を持つ研究員のターゲットになった彼女は追い込まれ、ある日研究所は終わりを迎える。


「返して!ママから貰ったの!」

一人の研究員が少女からぬいぐるみを取り上げる。
研究所に売られた少女は良い子にしていればいつか両親が迎えに来てくれると信じていたため、超能力を使って反抗することはなかった。

「帰ってくるわけないだろ。お前は売られたんだ」

そう言って少女を嘲笑う。
異常な性癖の研究員は少女が利口で臆病なことをいいことに大切にしているぬいぐるみの両腕を左右に引っ張った。ぬいぐるみは引き裂かれ、ぎゅうぎゅうに詰められた綿が飛び出した。
更に黒い革靴に踏みつけられ、年季の入ったボロボロの人形はもう元には戻らない。
彼女の全てに対する絶望が爆発した。
部屋に叫び声が響く。蛍光灯が激しく点滅し、マジックミラーやガラスは悲鳴のような音をあげて割れる。
研究員は彼女の下腹部にナイフを突き刺した。小さい身体に大きな傷が開く。そのまま抉るようにナイフで股まで裂いた。
ズタズタに引き裂かれた傷口からグロデスクな果実のように内臓が覗く。
少女は突きさされるたびに研究者たちの頭を順に吹き飛ばしていった。
最後の異常な研究者も殺してしまうと、少女は掠れた呼吸をしながら虚ろな目で引き裂かれたぬいぐるみを眺めた。


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