無限の現代神話
□十五話
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【前回のあらすじ】
黒蜂と陽菜子が接触。
かなたと宗近は過去の陽菜子を恋しく思う。
花園がアマテラスに攻撃される。
***
ファストフード店前で張り込みしている少女が一人。電柱に身を隠しメガネを光らせていた。
「私が見たところ…宗近先輩には秘密がある…」
彼女が後をつけている人物は蒼刃宗近。
彼は彼の彼女の友達鈴坂かなたと話した後、店を後にしている。
その様子を眺める。
羨望と自信の眼差しで見つめる。
「私なら解明できる!そう!この鶉 姫樹になら!」
「へー…どんな秘密ー?」
鶉がそう自信満々に拳を掲げた時、後ろから声が掛かった。
振り向くとそこには店をあとにしていたはずの鈴坂かなたの姿があった。
鶉は驚きのあまり後退る。
「うひゃあ!あ、あなたは…!鈴坂かなた先輩…!ち、近くで見ると、より小さい!」
「先輩に向かって失礼なぁ!お前関西からの遠征に来た奴だな〜。うりうり〜」
「痛い痛い!やめてくださいー!」
かなたは鶉の小さな頭を拳でぐりぐりと攻撃し、逃げられないよう腕を引っ付かんだ。
「さーて、宗近パイセンの秘密について教えてもらおうか」
「だ…誰か助けてー!」
かなたは鶉を自宅へと連れて帰るため、ずるずると引きずっていった。
*
鈴坂かなたは自宅の玄関を開けた。
後ろで少し怯えている鶉にどうぞと一言。
「ただいまー」
そして家の中に向かって元気よく帰りを知らせる。
するとかなたの妹の美優がリビングからひょっこり顔を出してこちらに叫んだ。
「お姉ちゃん!宗近様は!?」
「いない!」
かなたは少し怒っているように即答して脱いだ靴を揃え、溜息をついた。
妹美優の表情はキラキラした期待から一気に憂鬱に変わった。
それをみてかなたはまた溜息をつく。
「あいつ彼女持ちじゃん」
「それでもいいの!」
「…ミーハー!」
姉妹のやり取りを見て鶉は小声で言う。
「鈴坂先輩。宗近先輩は罪な人ですね」
かなたはミーハーの言うことは理解できないでいる。
宗近に惚れる者は皆ミーハー。かなたはそう思っていた。実際そうだった。顔が良い、頭が良い、強い。それだけで内面を見ず、好きになる。
はたしてそれは本当に「好き」というのか。周りに同調しているだけで、何か錯覚を起こしているだけではないか。
かなたはそう思っていた。
鶉とかなたは二階への階段を上り、かなたの自室へ入った。
自室に入ってまず鶉の目に飛び込んだのが、街に竜巻が起こったときにかなたが拾った学ランだった。その学ランは勉強机の椅子に畳んでかけてあった。
それを見て鶉は大声を出して騒ぎ立てる。
「鈴坂先輩!これは誰のですか!まさか彼氏ですか!でも鈴坂先輩は宗近先輩のことが…!」
「好きじゃねーよ!ふーざーけーるーなー!うりうり」
「きゃー!お許しをー!」
かなたは再び鶉の頭に拳を押し付けた。
「でもこれ…すごいボロボロじゃないですか?しかもこれ見る限り中学生の学ランですよね」
「気持ち悪いくらい詳しいなぁ…ここ出身じゃないくせにぃ」
その言葉を聞いて鶉は目を輝かせた。
「はい!宗近先輩たちのことならなんでも知ってます」
鶉は宗近と陽菜子のファンであり、二人のことなら誰よりも知っているつもりでいる。
彼女は二人のことに詳しくなれることに存在意義を見いだす程だった。
「あ!そういえば…さっき一人でぶつぶつ言ってた秘密ってやつはー?」
「ぐっ…い、いくらあなたが師匠の友達だとしても…言えませーん!そんなこと!」
かなたがもう一発、と拳を構えたとき、鶉は自ら口を滑らせた。
「先輩が魔女の力を使えるなんて!!!」