無限の現代神話
□十六話
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【前回のあらすじ】
それぞれの企み、想い。
それぞれの過去が明らかになる。
***
【過去編(中学編)】
好野家は閑静な住宅街にあった。
ベージュの綺麗な壁に、周りとは一回り大きい家は少し目立つ。その大きさは一階が陽菜子の母親玲子のオフィスとしての役割もあるからだった。
静かな午後の時間、陽菜子は鈴坂かなたを家に招いていた。休日ということもあり陽菜子は部屋着、かなはた私服だ。
かなたはベッドに足を伸ばして座る陽菜子の足首を見て改めて哀れんだ。
どうしてもクラスメイトから陽菜子への嫌がらせを止めようと思った。
「あいつにどうにかしてもらおうよ。きっとあいつが言えば女子たち言うこと聞くって」
そう言って宗近に助けを求めようと提案する。
しかし陽菜子は強気な眉を寄せて憤慨した。
足のことを忘れて立ち上がったかと思えば悲鳴を上げてベッドに座りなおした。
「…助けてもらったらもっと惨めじゃない!負けるのと同じだわ。私を馬鹿にしないでよね!」
その勢いにかなたは少し縮む。
そんなかなたを見て陽菜子は少し笑った。
「でもね、私そんなに相手にしてないのよ」
「…さすが陽菜子」
かなたは陽菜子を羨望の眼差しで見つめる。
かなたは彼女の相変わらず元気な姿を見て安心した。それと同時にそんな様子を見ていると胸の中にある気持ちが大きくなってくるのがわかった。
それを誤魔化すためにかなたは部屋を見渡し、話題を変えるためのものを探した。
そして机の上に立てかけてある写真立てをみつける。
かなたはそれに歩み寄り手に取った。
その写真は陽菜子と陽菜子の叔母が写っていた。彼女は魔女だ。
「ねぇ、魔女ってどんな感じ?」
思わず口にする。
「私たちと変わらないわ。特別な力を持ってるだけで」
陽菜子が途中で口をつぐむ。
かなたは心配するように振り向いて彼女をみつめた。
「…それなのに迫害しようなんて酷い。何も危害は加えない…むしろ人を救っているのに。…魔女はとっても優れてるの!すごい人たちなのよ!」
魔女は複数の団体に気味悪がられ、悪魔に仕立て上げられていた。魔女を殺そうとする過激派さえ立ち上がり始めた。
そんなニュースに彼女は心を痛めていた。
かなたは悲しそうな顔をする陽菜子に慌てる。
「じゃ、じゃあさ!じゃあさ!今度…会わせてほしいなー!なんて」
その言葉に陽菜子の表情は明るくなる。
「もちろん!いいわよ!叔母さんは素敵な人なんだから」
「やったー!」
かなたは喜びのあまりぴょんぴょんと部屋の中を飛び回る。
「ちょっとー…一階で仕事してる人たちもいるんだから静かにして」
「ご、ごめ、ぎゃっ」
「ほらぁ」
かなたは陽菜子の勉強机にぶつかり、机の上にのっていたチラシやパンフレットを床に落とした。
ごめんごめんと拾い上げたかなたはパンフレットを見て、固まる。
「え、これって」
「あぁ…それね…話しておこうと思ったんだけど」
かなたの表情は不安、混乱、戸惑い。すべてを表現している。顔に出やすい彼女は可笑しいほど表情をころころ変えて慌てた。