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□魔女狩り
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「こんにちは、じゃないな、おはようございます?かな?」


天使のような微笑みで俺に笑いかける綺麗な顔をした人。
なんて言ったって、こいつは天使の顔をした悪魔なんだけどさ。


「は、そんなことはどうでもいいだろ、サツが来る前に早く手を打とう」
「別に、サツなんか意識しなくたって、彼らはまだ僕たちの存在に気づいてないよ。それに、こっちには味方がいるんだもん。」
「味方?」
「うん、そう。あっちにスパイがいるんだから、サツの情報は筒抜け。ね?大丈夫でしょ?」


スパイを送った、なんて初耳だった。
天才と呼ばれた美しい顔をした青年は、まるで日常会話をするように話をする。
俺にとっては、まだ震えることだってのに。


「それで、この間のことだけど。アレはもう大丈夫な訳?」
「え?まだアレの話?そんなのとっくに片付いてるよ、僕のこと舐められちゃ、困るな」


月に何度も快楽を求めて動く悪魔に、会う約束をするようになって、どれほど経ったのだろう。
たったの、月に一度会うだけなのにこんなにもこの悪魔に会うのが怖い。

今でも、俺がこの悪魔の目の前で酒を飲み、こんな変な話をしていること自体、不思議で仕方が無いのだが。

ことの発端は、俺がこの悪魔の''魔女狩り''をしているところを見てしまった、ということだった。
あの時は、何も感じなかったけど、今となっては何故あの時あの対応を取れたのか不思議で仕方が無いぐらい。
何度も、もう死んでいる筈の人に何度も包丁を刺す姿を見て、何も、本当に何も感じなかった。
悪魔の方をじっと、見ていた。ただそれだけだった。
今思い出しただけでも失禁しそうな。そんな感じなのに。

いつか、この俺が悪魔の餌食になるんじゃないかって、ひやひやしているんだけど。
だって、いつだってこいつは本当に何を考えているかわからない。
俺を仲間に入れたこと自体不思議でたまらないのに。
あの時、俺を仕留めなかった理由が、未だにわからないのに。


"優秀で勘が冴えている弁護士さん、僕の仲間にならない?"


俺はいつ職業を言った?そんな風に考えてたけど、怖くてやめた。だって答えが出るはずがないんだから。あいつはもしかしたら人の心を読めるのかもしれないってあの時思ってしまった。あの時の何を考えているかわからない悪魔の目は、今でも忘れられない。


「さあ〜て。次の狙いは決まったよ」
「今日も楽しくなるといいね」


悪魔は狙いを定めた。
美しくて、綺麗な顔をしそうな人を。
悪魔が求めている''綺麗な顔''をしそうな人を。
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