-Short Story-

□さくらのはなびら
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当時俺がまだ入院してた時 ……

あの人とよく行った病院の屋上。

病院の屋上から桜並木の花びらは飛んできやすい。だからか、屋上も少しだけピンク色をしていた。

看護師さんたちが迷惑そうに掃除をしていた。

『 こんなに汚れてたら掃除やになっちゃうわ〜! 』

びゅうっ

その時、風がひゅっ、と音を立てて吹き、辺りを撒き散らした。

サクラの花びらが散乱する。


ふわっ


俺の頭にサクラの花が優しく落ちてきた。

花の匂いが香る。俺はこの匂いが本当に嫌いだった。

「 あの人の香りがする…… 」

花の香りはいつだって、あの時のことを思い出す。だから花はあまり好きではない方だ。

だけど、花は本当に綺麗だ。そして、とても儚い。

まるで、俺の元を離れた、あの人のように。

この、花特有の甘い香りに何度も酔いそうになった。

まるで、あの人に溺れるかのように。


“ 花占いしよーよ!ね!”


“すきーっ、きらいっ、すきーっ!すきだって! ”


“ 君のことがすきだって ”


“ 名前、教えて?”


ちょっと子供っぽいけど俺より年上のあなた。

あなたのことを考えるだけで胸が痛い。

お願いだから、もう出てこないで、俺の記憶から消えて。

本心だというのに、どうしてこんなにも心が虚しいのだろうか。

こんな感情を抱くこと自体、今の俺にとっては駄目なことなんだろう。感情を持っていては前に進めない。

俺のせいで死んじゃったあの人のために。

屋上の端から桜並木を見下ろす。ここの柵の鉄パイプは本当に錆び臭い、なんてつまんないことも思いつつ。

あれから桜並木を見ていると、いろんな事を思い出してしまって………

屋上の鉄錆の柵を持っていた俺の握り拳に何かが濡れた。

「 俺にはっ、泣く資格も無いのに…っつ、! 」

元々あの人の寿命は短かったらしい。でも、俺はそれを早めてしまった。


“ 死ぬのが怖い … ”


“ まだ生きたいよ … ”

あんなに生きたがっていたあの人の命を奪ってしまったのだから。

俺にはあなたの名前を言う資格もない。
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