黒白Rhapsody(D.Gray-man)

□第8夜
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通信ゴーレムでラビはコムイに連絡をとっていた。

「うん、それは思わぬ収穫だったね。」

クロウリーについての報告にコムイは自身の感想を述べた。

「どうする?オレたちの内の誰かで教団に連れて行くか?」
「いやいいよ、クロちゃんは即戦力になりそうだしね。
君らと一緒にクロス元帥を追ってもらう。
今は戦力の分散はしたくないんだ。」
「オッケー」
「それに…」
「ん?」
「アレンくんとアヤくんの眼さ、伯爵の癇に障るかもね。
…厄を呼ぶかもしれない。」

ラビは苦笑した。そして本音を漏らす。

「コムイ、オレさぁアレンたちの眼って便利でいいな〜って思ってたんさ。
でも実際アクマの魂を見た時、正直パスだなって思った。」

エリアーデに囚われていた魂のことを思い出す。
グロテスクなんて生易しいものではないあの魂のことを…

「ありゃキツイさ…気持ち悪くてしばらくメシ食う気になれねぇもん、オレ。」

そして遠い空を眺めた。

「あいつらの見てる世界って…“地獄”だな。」

ラビは忘れていたんだ。
私たちの眼は恩恵ではなく“呪い”だということを。


ラビがコムイに報告している時、私とアレンは汽車の外に立っていた。
そして汽車の窓に映った自分たちの顔を見て苦笑した。

「濃くなってる…」
『線だけで描かれてたペンタクルが紅く塗りつぶされちゃったね…』

そしてアレンは一度眼を閉じ、左眼を発動させた。私も真似てみる。
キュインという音と共に発車のようなレンズが現れる。
暗い世界が広がるように感じ、アクマをスキャンする。

「半径300メートルくらいなら、障害物があろうとアクマの存在をスキャンできそうだね。」
『眼を自分たちの意志で操れるようになったうえ、アクマの魂を現実に写すこともできる…
この眼は“進化”しているのね…』
「アクマのように。」
『この能力はあまり使わない方がいいわ。』
「えっ?」

私は発動を止めながら言う。

『他の人達に魂を見せれるようになったということは、一般人を巻き込む可能性もでてきたってことだもの。』
「あっ、そうか。」

アレンも慌てて発動を止める。
そして彼は微笑んだ。
その笑みは無理している様子はない純粋なもの。

「アヤ、クロウリーに言ったのは僕のこと?」
『えっ?…うん。』
「戦う理由があって、アヤも傍にいてくれる。
それだけで、僕は頑張れるよ。」
『呪いのことで悩まないで。私はいつでも一緒よ?』
「ありがとう。」

そして私は彼に近付き、頬にキスをした。

『マナはアレンくんを怨んでないわ。彼の最期の言葉を信じて?』
「うん!」

汽車の発車時刻が近付き、私たちはラビを呼んだ。

「ラビ!!」
『汽車が出るわよ!!』
「やべ!!じゃな、コムイ!!」

クロウリーが待つ汽車の個室に戻る。
すると空気が重く、彼は落ち込んでいた。

「そんな落ち込むなってクロちゃぁーん。」
『いくら説明しても信じてくれなかったんだから、しょうがないじゃない。』
「だが…っ!!」

何故彼が落ち込んでいるのか…
それは村を出るときに村人に言われた言葉が原因だった。

「アクマ退治をしていただと!?
そんな馬鹿な話、信じられるものか。
どっちにしろワシらにとっちゃ化け物だ!!
出て行け!二度とここへは帰ってくるな!化け物!!」

アクマの存在は非公式、だから化け物呼ばわりされるのはしょうがない。
しかし村人たちの言葉に怒りを覚えたのも事実。

「去れ!」
「化物共!!!」
『…もう我慢できないわ。』

私は怒りのまま村長の顔を殴り飛ばす。
アレンが私を止めるが私は叫んだ。

『黙れ!こんな所こっちから出ていってやるよ!!
お前らはクロウリーに助けられてたのに、それを理解しようともしないただの馬鹿者共だ!!!』

アレンに連れられ、ラビは落ち込むクロウリーを連れて逃走した。

「まぁ、気持ちは分かりますけどね。
さすがに僕もムカッとしましたよ。」
『そうよ、クロウリーも泣くぐらいなら殴り飛ばせばよかったのに。』
「…アヤはもう少し我慢しようよ。
それにしてもアヤがあんな暴言を吐くとはね…」
『だってムカついたんだもん。』

するとラビがふっと何やら余裕のある笑みを浮かべた。

「いいじゃん、帰れんでも!
男は胸(ここ)に故郷がありゃいいんさ。」

―くさっ―

親指で胸を指しながら、ダンディボイスで言うラビは気持ち悪いことこの上なかった。

『ねぇ、クロウリー。気晴らしに汽車の中でも見てきたら?』
「それいいさ!乗ったん初めてなんだろ?」

クロウリーは立ち上がりながら頷いた。

「う、うむ…そうであるな。
ちょっと行ってくるである。」
「「『いってらっさーい!!』」」

―ほんっと発動時とキャラ違うな…―


それから3時間後…

『ねぇ、いくらなんでも遅過ぎない?』
「そうさね…」

そして私たちは汽車内でクロウリーを捜し始めた。

「クロちゃんやーい!」
『こんな小さい汽車回るのにどうやったら3時間もかかるの?』
「まさか迷子…?」
「『まっさかぁ〜♪』」

そして最後尾の車両の扉を開いたアレンが最初に見たのは、素っ裸でぶるぶる震えるクロウリーだった。

「ん?悪いね。ここは今、青少年立ち入り禁止だよ。」

3人の男と1人の子供がそこにいた。

「さーダンナ、もうひと勝負いこうぜ。次は何賭ける?」
「い、いや、しかし…」

私たちはポカンとするしかない。

「何やってんですか、クロウリー…」
「こ、この者たちにポーカーという遊びに誘われて…そしたら、みるみるこんなことに…」
『要するにカモられたのね…』

すると男たちが妖しく笑う。

「おいおい、逃げんなよぉ?」
「一度受けた勝負だろ。男だったら最後までやっていきなよ。」

横目でチラッとアレンを見ると修行時代のあの夜と同じ眼をしていた。

『アレンくん、どうする?』
「そういうアヤだってヤル気満々でしょ?」
『…まぁね。あの夜の再来かな?』

そして私たちはコートを脱ぎ差し出した。

「このコートの装飾、全部銀で出来てるんです。」
『これとクロウリーの身包み全部賭けて私たちと勝負しない?』
「じゃぁ、お嬢ちゃんも賭けの対象にしようぜ?」
『えっ?』

アレンの額に一瞬怒りマークが見えたが、彼はゆっくり首を縦に振った。

「負けるわけないじゃないか、アヤ。」
『それもそうね。いいわよ、その勝負受けて立つわ。』
「よっしゃ!」

ガッツポーズをする男たちとは裏腹にラビは冷や汗を流す。

「おい、大丈夫なのか?アレン、アヤまで…」
『任せといて!昔、2人でカジノを1つ乗っ取ろうとしてたくらいだから。
その時の賭け物も私だったっけ?』
「懐かしいね…」

それから数分後、笑顔の私たちは勝利し続けていた。

「コール」
「ロイヤル…ストレートフラッシュ…」
『また、アレンの勝ちね♪』
「「「だぁああ!ちくしょー」」」

そこには荷物を取り返した私たちと、パンツ一丁の男たちの姿が…

―チョロイな…―

「ちくしょう、もう一回だ!」
「いいですよ。」
「すごいである、アレン、アヤ!」

関心するクロウリーとは違い、ラビは小声で私に問う。

「どゆことさ?お前ら異様に強くない?」
『イカサマしてるもの。』
「マジ!?」
『先にクロウリーに仕掛けてきたのはあっちよ。』
「カードで負ける気はしませんね。
特にアヤと2人なら誰にも負けません。」
『修行時代に師匠の借金と、生活費を稼ぐために命懸けで技を磨いてきたからね。
他にもいろいろ危険な仕事してたけど。』

そして私たちは黒く笑った。

「博打なんて勝ってなんぼ…容赦はしません。
あっちだって3人グルでやってんですから、おあいこですよ。」
『コール!』
「なにぃー!!!」
「2人が(腹)黒いさ…」
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