黒白Rhapsody(D.Gray-man)

□第20夜
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アクマの攻撃を受けた私、ラビ、神田は壁に身体を強打して動けずにいた。

「ぐ…っ」
「う…」
『ア…レン…』

私の隣に神田とラビが転がり、アレンはレベル4に攻撃されている。
跪く状態になっているアレンの顔(頭)の辺りに手を添え火を起こすアクマ。
ボッという音と共にアレンの周りが光る。

『アレン…!』

痛む身体を起こした瞬間、アクマの上に黒い影が現れた。

「よくもホームをメチャクチャにしたわね。」

新しい黒い靴を発動させたリナリーだ。

『リナリーッ!!』
[あらてか]

レベル4は光の弾を作って撃とうとする。

―撃ちこんでくる…―

リナリーはアレンに抱きついた。

「!」

そしてアクマの弾が放たれる。

「アレン…ッリナリ…!」
「まともに喰らった…!」
『ッ!』
[いや、あたってない。]

そしてアクマは地面を蹴る。

[そこだ。]
「『!?』」
「え…あんな上まで…!?」

リナリーの黒い靴の力で、彼女とアレンはヘブラスカの頭上数メートルの場所にいた。
私たちから見ると遥か遠く。2人の姿が点のよう。

「見えた…?」
「『…見えなかった…』」

ラビの問いに私と神田は呆然と答えた。
その後、私はアクマがいないうちにそっと身体を起こした。

『痛っ…』
「おいっ、お前その身体じゃ戦えないだろ!」
「そうさ、アヤ!!」
『でも…やるしかないのよ。
アレンやリナリーだけに任せるわけにはいかない。』

そして私は戦場へ戻った。

「うっぷ…リナリー…」

上空のアレンはティムキャンピーに剣を任せ右手で口を覆う。

「速すぎ…」
「ごっ、ごめんっ。やだ、吐きそう?」

―おかしいな、こんなに高く飛ぶつもりなかったのに。久しぶりで感覚鈍った…?―

彼女は自分の新しいブーツを見た。
そこには蝶のような翼があった。

「!なに…これ…?」

そのときアクマの攻撃が2人に降り注ぐ。
アレンがいち早くそれに気付き、マントでリナリーを庇いながら身体の角度を変え攻撃を交わす。
そしてアクマの蹴りがリナリーの脚にぶつかる。

「…っ」

それをどうにか蹴り飛ばしたリナリーにアレンがそっと言う。

「リナリー…僕は大丈夫だから放して。
道化ノ帯をのばせば落ちないから…
それから…みんなを全然守れなくてごめん…」

切なさそうなアレンの顔と言葉にリナリーの胸が痛む。
彼女はアレンから離れると言った。

「私もごめん…来るのが遅すぎだね。
あいつを止めよう。」

そしてリナリーはレベル4に向かって行った。

「はぁあああああ」

激しい蹴り合いがリナリーとアクマの間でぶつかり合う。

「いいぞ…レベル4とやり合えてる。
リナリーの発動は成功だ。」

ルベリエが戦場を眺め微笑む。

「アレン・ウォーカーと羽蝶アヤ、3人でいけばこのまま…」
「…」

―そうだろうか。アレンくんはもう限界にきてるはずだ。
アヤくんだって、さっきの攻撃でもうボロボロだ。動けるような状態じゃない。
リナリーの靴もあんな発動をしたばかり…
とても楽観視できない。―

すると戦場を睨むコムイの無線にノイズが入った。


リナリーの強い蹴りがきまり、アクマの身体が床に倒れた。
その瞬間、アレンの声が響いた。

「アヤ!!」

私はその声に応えてアクマのもとへ走る。
アレンの剣が勢いよく振ってくると、アクマはそれを手で受け止める。
ギギギギッと嫌な音を響かせながら、剣とアクマの手がこすれ合う。
私はアレンの隣に並び、剣を両手で押さえつけた。

[ふ、ざんねんでした]
『それはどうかしら?』

すると上からリナリーがすごいスピードで落ちてくる。
剣の柄をそのスピードのまま踏みしめ、もう一度上空へ。

―またくる…!―

アクマの顔が次の攻撃に恐れ引きつる。
リナリーは上空で身体を反転させる。

―もっと高く…もっと…もっと速く…
もっと加速して威力を強く…―

その想いに反応してブーツの蝶が羽を広げ威力を上げる。

―やっぱりこの“黒い靴”、以前のものと違う…
私が操作しなくても勝手に私の想いに応えてくれる。装備型の感触と全然違う。―

そして彼女は空気の膜を強く蹴った。

[はなせ!!]
「放す…かッ」
『くっ…』

2人で剣を押さえる腕に力を込める。

[はなせこのぉ]

“カルテ・ガルテ”!!!

アクマが突然動きを止め、リナリーの蹴りで押さえつけられた剣がアクマの身体を貫いた。

―今のは…カルテ・ガルテ…?…まさかっ!!!―

私とアレンの背後の壁の上の方で何かが爆発する。
そこにできた大きな穴から見覚えのある人物が姿を現した。
私とアレンは振り返る。
そのときには既に私とティムキャンピーは涙を目に浮かべていた。

「撤退は中止だ、コムイよ。
このビールッ腹ヤローが実験サンプルにしてやる。」

私たちの目に映り、コムイの無線に言い放った人物…
燃えるように紅い髪、
口に咥えた煙草、
顔を隠す仮面、
右手に持った白い銃、
そしてそんな彼の後ろに控えた女性“聖母ノ柩”…
彼に間違いない。

『マリアン!!!』
「クロス元帥…!?本当に…」

コムイの言葉にクロスは意地悪な笑顔で答える。

「他に誰に見える。」

するとコムイの無線から弱々しい声が届いた。

「…ちょ…室…長…」
「リーバー…?リーバー班長か!?」
「すみません…今意識が戻って…
自分たちは第五研究室の下、瓦礫と炎の中に…
詳しい位置はわかりませんが…
ミランダの…“時間停止(タイム・アウト)”の中にいます…
“抱擁ノ庭(メーカー・オブ・エデン)も視認できます…みんなまだ生きてます…
頼みます…消火を…」
「わかった、すぐに消す!もう少し頑張るんだ。」

コムイは指示を出すべく足を動かし始める。

「ミランダの消耗を少しでも抑えられるよう身体をできるだけ寄せ合って、“時間停止”の範囲を小さくするんだ。」

リーバーにそう告げると次はクロスに言った。

「クロス元帥…」
「何だ。」
「私は上に戻ります。
アレン、アヤ、リナリーと共に目標の破壊…頼めますか。」
「言われるまでもない。行っていいぜ、“室長”」

ほっとしたコムイは神田とラビに向かって叫ぶ。

「神田くん!ラビ、大丈夫か!?」
「もぉ、動けねェ〜」
「すまない、武器のないキミたちを戦わせて…」
「はぁ?テメェに謝られる筋合いはねェ。
アクマとやんのが俺の仕事だ。」
「ユウってばマジ男前…」

ゼェーゼェー言いながら、2人は話す。

「兄さん!?研究室に生きてる人がいるの…!?」
『そうなの、コムイさん!?』
「そうなんですか!?」
「アレン、アヤ、リナリー…」

彼は一瞬迷い、嬉しそうな声を出した。
その様子は下の方にいる私たちには見えない。

「ああ!」

その声を聞いたアレンは涙を流しリナリーは微笑んだ。
その様子はコムイの胸にトゲを刺す。
私たちに背中を向けるとコムイは指令室へ戻った。
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