黒白Rhapsody(D.Gray-man)

□第27夜
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仮想19世紀末
ぼくらの世界は終末に向かっている

悪性兵器AKUMAと共に終末計画“暗黒の3日間”の発動を企むノアの一族、
そのリーダー千年伯爵と
世界救済を掲げ設立された組織“黒の教団”

両者の長い聖戦が続いていた
その神(イノセンス)に適合した使徒“エクソシスト”に託されていた

ぼくらは信じてる
この聖戦を乗り越えたその先には信じた世界がきっとあるよね




ノア襲撃の30分前、黒の教団・北米支部…

私が見せてもらった資料を使った会議が行われていた。
リーバーはジョニーを連れて他の科学班員と共にそこに立つ。

「近づいても危険はありませんわ。
彼には意識がありません。」

湯気のたちこめる部屋にレニーの冷静な声が響く。

「押すな、ペック!」
「湯気でメガネが…」
「あ…」
「なに突っ立ってる、ジョニー。近くに来てよく見とけ。」
「はい!」

入口で足を止めたジョニーをリーバーが呼ぶ。
こうして人体を改造した半AKUMA化部隊“第三使徒計画”の本格導入の為の研究会議が始まった。
床の下には水槽のようなものがあり、中に私たちとあまり年齢の変わらない傷だらけの人物が目を開いたまま横たわっていた。
その目には生気の欠片もない。
その近くにレニーが立ち説明を始める。

「名称は“アルマ=カルマ”
AKUMA卵殻との融合に成功した唯一の母胎ですわ。
今回開発した5名の第三エクソシストには彼の細胞が使用されています。」
「…っ」

ジョニーは驚愕のあまり言葉を失い目を見開く。

「これがあの…本当に生きてたとは…」
「長官がずっと隠し持ってたらしいよぉ。
身内の僕らにも黙ってたなんてさあ〜」

リーバー以外の班長たちが話す。
その隣でジョニーはリーバーに小声で尋ねた。

「あの子…人間…スよね?
ひどい姿してるけど…その…アレンとかとかわんない歳…ですよね?
なんで?なんであんな子供が第一母胎になってんスか…っ」

それに答えたのはリーバーではなく、レゴリー・ペックだった。

「“第二エクソシスト”」
「!!?」
「アレはただの子供じゃない。
9年前、教団が造り出した人造使徒の成り損ないなのだよ、マシューくん。」

マシューとはペックの自慢の部下だ。

「はい!ペック班長。」

ジョニーはペックの発した“人造使徒”という言葉に違和感を感じる。

「常人の肉体では卵殻のエネルギーに耐えきれず直後に壊死してしまいます。
高い再生能力をもつセカンドならその耐久時間ははるかに長い…
セカンドについては班長クラスの方なら御存知よね?
そうじゃないヒラの方は資料をお読みになって。」

レニーがジョニーやマシューのような“ヒラ”に渡したのは、私がコムイに見せてもらった資料だった。

ジョニーが読んでいるときにズゥが現れた。

「ズゥ先生、何を…?」
「どいてくれ、アルマと話したい。」
「今は会議中です…」

それをバクがレニーの肩を掴み止める。

「バク…!」
「少しだけだ。話させてやってくれ。」
「アルマ…」

ズゥは涙を流しながらアルマが眠る水槽に手を着いた。

「信じられんかった…本当に…アルマなのか…こんな所に…
まだ…現世に留められておったとはなぁ…っ」
「呼びかけても応えませんよ。
もうずっと昏睡状態のままです。」

ズゥにルベリエが冷たく言い放つ。

「マルコム…」

ズゥはそんなルベリエを涙目で睨みつけた。

「アルマの生存をなぜすぐ知らせなかった…!」
「こんな機会がなければ一生お伝えするつもりはありませんでした。
“彼にはこれからも道具として生きて頂くことになりました”なんて言って、あなた方は承諾しましたか?
あの実験の指揮をとられたチャン家、そしてエプスタイン家。
あなた方はアルマに当時の御当主を惨殺されていらっしゃる。
こちらとしても気遣ったつもりだったのですがね。」
「せめて…神田ユウには…知らせてやる…慈悲もなかったのか…!」
「なんの意味があるのでしょうか?」

それを耳にしながらジョニーの読み進める手は止まらない。

“第二エクソシスト”
人造使徒計画の研究で生み出された2体の被験体のことである
被験体“Alma(アルマ)”の暴走
研究所職員 計46名 皆殺し
生き残ったのはもう1人の被験体…“YU(ユウ)”

その瞬間、ズゥが叫んだ。

「私らが2人を殺し合わせたんじゃぞ!!!」
「おえっ」

ジョニーが最後に読んだ一文は悲劇的なものだった。

「うわっ」
「ジョ、ジョニー!?」
「コイツ吐いたぁああぁぁぁああ!!!」

ジョニーの吐いた被害が隣にいたペックの白衣にまで及んだ。
ペックが怒るのも無理はない。
ジョニーが読んだ一文、それは…

“YU”は“Alma”が再生しなくなるまで
彼をバラバラに破壊した…

そしてジョニーとリーバー、ペックとマシューは部屋を追い出されトイレにいた。

「大丈夫か、ジョニー?」
「バリバリ元気です…」
「強がるなよ。」
「おぅえぇぇぇええええ」
「あ〜〜もぅ。つか何してんです、ペック班長。」

吐いているジョニーとその背中をさすっていたリーバーの後ろには何故かしゃがみこんで2人を見るペックとマシューの姿。

「見てるんだけど?」
「班長、外出ましょうよぅ。」
「あの程度でゲロるってキミさぁよく本部いるねー?僕の助手は平気?」
「へーきです。」
「あ…あんな人間見たの初めてで…すみません…」
「まったくだ!
キミがゲロ吐き散らしたおかげでルベリエ長官に追い出されちゃったんだからね〜〜〜〜
“アルマ=カルマ”、もっと見たかったのにさぁ〜〜〜〜」

五月蠅いペックをリーバーが引きずり出す。

「ペック班長!俺からもホント謝りますんで。」
「大体なんで今日の大事な研究会議にあんな助手連れてきたんだっ、リーバー!!」

その後もトイレの外でペックは少しの間叫んでいたが、リーバーは気にせずにジョニーの元へ戻った。

「すみません、班長…」
「気にすんな。辛いもの見せちゃったな。」
「オレ…なんか…自分のやってることがわかんなくなりました…っ
班長は…どうしてオレを今日連れてきてくれたんスか…?」

2人が切なさそうな顔をした瞬間、サイレンが鳴り響いた。

「敵襲!!支部敷地内にアンノウン出現!」
「は?」
「!!」
「AKUMAではありません。
結界包囲網次々突破されてます!」

その正体は仮面を外し人間の姿をした千年伯爵と、人形のような形で伯爵の肩に乗るロードだった。

「アルマ=カルマはあそこだよぉ〜〜〜〜♪」
「おっケー
ひさしぶりに観客がいるとなんだかノッちゃいマスネ♡」

北米支部の建物を眺めながら伯爵はロードと話す。

「身内で争うほど悲しいことってないよねぇ。」
「14番目みたいにネェ…♡」
「あーそうそう。14番目の時は辛かったぁ…」

その瞬間、膝を抱えて涙を流し始める伯爵。

「そーダヨネ、あん時は…」
「自分でゆったんじゃーん!!
もぉ〜〜〜そんなんでアレンと会えるのぉ〜〜〜?
アヤのことも気になるしぃ〜〜〜
ホント泣き虫なんだからぁ。」
「はあ、まぁ…今しょげたのナイショにしてくだサイネ?」
「ハッキリしないなぁ〜」

そう言いながら伯爵はロードと共に足を進める。
北米支部の敷地に足を踏み入れると結界から攻撃が襲ってくる。
しかしそれらはすべて破壊される。
伯爵の顔には笑みが広がっていた。
そしてそれを隠すようにいつもの仮面が現れる。
あの大きな口と何も映さない瞳の仮面が…

「でも我が輩はアダム第1使徒“千年伯爵”でスカラ。
“千年伯爵”は立ち止まらナイ。
エクソシストの“心臓”を暴き、神様を闇に召すマデ。
何があろうと立ち止まることは許されないノデス♡」

杖で伯爵は北米支部を指す。
そして彼は大量のレベル4のアクマを従えて侵入していった。
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