黒白Rhapsody(D.Gray-man)

□第29夜
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私たちは目の前でアルマを破壊し続けるユウを見つめていた。
血と涙で染まっていく目の前の状況に立ち尽くしていた。
私はそのうちに身体の震えを抑えられなくなりアレンに縋り付いた。
涙は止まることを知らず、私の目から流れていく。

『どうして…どうしてっ…』
「アヤ…」

アレンがそっと私を抱きしめる。
足の力が入らなくなってきていた私は彼に身体を委ねる。

『ユウも…神田もアルマも、ただ生きたかっただけでしょ…一緒に…』
「そうだね…これは悲劇の中に起きた悲劇なんだ…」
『これが本当に過去に起きたことだなんて…』
「それが教団の過ちなんだよぉ。そして新たな悪魔を呼ぶんだぁ。」
「『!!』」

そして少し経った時、アレンが私を抱く手に力を入れた。

【やめろ…】

彼の鼓動が大きく聞こえる。
それは私が彼の胸に耳を当てているからではない。
彼が怒りに溺れているからだ。

【もう…やめろ…】

そして私を離して左手を握った。
その拳からピシッと火花が散る。

【ア、アレン…?】

「こっ…こっこっこっこぉ〜〜〜〜」
「お?」
『ア…レン…?』

その様子に私とロードはじりじりとアレンから後ずさる。
彼の周りには怒りの炎が生まれ、顔には怒りマークが浮かぶ。

『…やばい。』
「えっ?アレン、どうしちゃったのぉ?」
『…アレンがキレる。』
「えっ…」
「こんの…バ神田ぁっ」

彼の頭からぶちぶち何かが切れる音がして、怒りのあまり私たちの下の地面にヒビが入った。

「いつまでこんなの垂れ流してるつもりだ…っ」

そう言いながら彼は左手を横に伸ばす。

「あのターバン野郎なんかにいーようにされて…過去のぞかれて!
その所為でアヤまで泣かせて!!」
『そこ…?』

私は冷静にアレンのキレてる理由のズレを指摘する。

「いつもの短ッッッいキミのド短期はぁ…」

アレンが…キレた。
それと同時に現実のアレンの体が動き出す。
神田はまだ額に汗をにじませ苦しんでいる。
アレンと同時に目を覚ました私は神田から勢いよく離れる。

「!?へ?動いた?」

怒りのままアレンの拳が神田の額を襲う。

「どこ行ったんですか――――――!!!」
「キレるとこ、そこ―――――?」

アレンの左手の拳で神田の額の目が粉々に割れワイズリーにもその影響が出る。
そして私とアレン、ロードの額からも目が消えた。

「うがっ、頭痛ぅ――――っ」

ワイズリーは痛みのあまり転がりまわり、殴られた神田は飛んでいった。
そして私とアレンはイノセンスを発動させた。

「左腕(イノセンス)で額割るって容赦ないね、アレン。」
「元々僕ら、こーゆう間柄ですから。」
『よかった、神田から離れといて…巻き添えはごめんだわ。
てか…神田、大丈夫なのかしら。』
「へーきでしょ。」
『は、ははっ…』

アレンの言葉に呆れて笑うしかない。その頃、ノアは…

「あちゃ〜〜〜〜
今の衝撃でワイズリーの持病がでちゃったか。」
「ワイズリー、無能タイム入りましたー」
「ひでぇな。」

倒れて頭の痛さにのた打ち回るワイズリーを他のノアは心配するでもなく侮辱しているのだった。
私とアレンは並んで立ち、これからの戦いに集中していた。
記憶の世界から逃げ出せたとしても、まだノアの掌の上。油断はできない。

「でも、ちょーっと遅かったかもぉ〜〜〜」
「『え?』」

ロードの言葉に私とアレンが首を傾げた瞬間、道管が意思を持ったように人々を襲い始めた。

「ウォーカー!アヤ!!」

その声に振り返るとトクサが道管に捕まっていた。
道管が彼の身体を締め上げている。

『トクサ!!』

彼はボロボロになりながらも私たちに叫ぶ。

「ぼ、母胎が…アルマ=カルマをとめろぉぉおぉぉ!!」

すると私たちの立っている周辺も道管が破壊していく。

『あっ…』
「なっ…!?」

体勢を崩した私をアレンは支えながら周囲を見渡すとリーバーやバク、ジョニー、ルベリエなど全員が道管に締められていた。

「ぐ、苦しい…」
「助けてぇーっ」
『みんな!!』

そこに不気味な声が聞こえてきて道管の根元が見えてきた。
それはアルマ=カルマ…神田の記憶を見たことで目覚めようとしているのだ。

「おおおぉぉおおおおおお」
「何だ、コレ…」
『アルマ…』
「えっ?」
「目覚めるアルマの憎悪が体内のダークマターのエネルギーに変換されてるのだ…!!」
『それって…!?』

崩れ落ちてくる瓦礫を破壊しながらバクに問う。

「まずいよ、アレン、アヤ!
アルマ=カルマがAKUMAになっちゃうよーっ」

ジョニーが叫ぶ。

『そんな…っ』
「アレェェエン!!!」
「ジョニー!!!今助けっ」

その瞬間、アレンの身体をアルマの意思で動く大きな瓦礫が襲う。

「がはっ」
『アレン!うあっ』

彼が弾き飛ばされ、私はみんなの元へ走る途中に強い風圧で吹き飛ばされた。

『くっ…』
「うぐっ…アヤ、大丈夫…?」
『…どうにか。』

発動が解けてしまった私たちは互いに近くの瓦礫の上に倒れていた。
そのうちに段々アルマの放つ光が強くなっていく。
それと比例して道管の締める力も強まる。

「ぐぁっ…」
「あ、熱い…っ」
「まっ、まずい…これは…でかいぞ…っ」

そして私たちは自分たちの身体を見て気付く。
そこには大量のペンタクルが浮かんでいた。

『この光、アクマウイルスが…!!』
「っ!!」

私と同様に気付いたアレンがアルマに手を伸ばす。

「や、やめ…ろ…アルマ…
ここにはたくさん人間が…っ」

そのまま強い光は私たち全員に襲いかかった。

「殺セ♡」
「『みんな…っ』」

大きな爆発が支部の外まで伝わる。
その光景をリンクはテワクと共に見た。

「!?なんだ…」
{こちら本部!どうしました!?今の音は…!?}

リンクの無線から心配そうな声がする。

「私たちじゃない。遠くですごい光が…あの方向は北米支部…!?」

するとリンクの隣のテワクに異変が起きる。
一瞬彼女の左眼に大きなペンタクルが浮かび、意識が持っていかれ、すぐに元に戻った。

ざわっ

彼女は地面に膝をつき、苦しそうに喉に手をやる。

―今の…何ですの…?―

「もっと支部に近い予備ゲートはないのですか!?」
{そこより近いゲートは結界の中で…}

リンクはテワクの異変に気付くことはなかった。


強い光の中、1人の青年が目を覚ました。
彼は地面にするりと着地すると、長い髪を風に揺らしながら友人の名を呟いた。

「ユウ…そこにいるの…?」

彼の足元には彼の放ったウイルスによって身体が粉々になり死亡した人々。

「ひと…?」

そこにある人物が歩み寄ってきた。
半身をウイルスに犯されながらも平然と立ち、その傷が勝手に治っていく人物…神田だ。

「ユウ…?」

2人の間には冷たい空気が流れていた。


ノアは無傷のまま表情はどこか楽しげにすっからかんになった支部を見渡した。
ティキは頭を抱えるワイズリーを胸に抱えている。

「フフ…さ〜テ♡ここからが見物デスヨ♡
踠き苦しむがイイ、“14番目(アレン・ウォーカー)”!!♡」
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