黒白Rhapsody(D.Gray-man)

□第2夜
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「明日まで麻酔で動かないけど、ちゃんと治ったからね♪」

私、アレン、そしてコムイはエレベーターに乗り込み、降下中。

「まぁまぁ、副作用はあるけど、寄生型はとてもレアなんだよ〜
イノセンスの力を最も発揮できる選ばれた存在なんだ。」
「?いのせんす?」

すると5つの玉座が照らし出された。

「それは神のイノセンス―全知全能の力なり」
「また一つ…我らは神を手に入れた…」
「ボクらのボス、大元帥の方々だよ。」

驚く私たちに説明したコムイは、鋭い視線をアレンに送る。

「まずは、アレンくん。キミの価値をあの方々にお見せするんだ。」
「…え?」

それと同時に暗い闇の中から、たくさんの白い腕が湧き上がる。
それらはアレンの身体を捕え、闇へと引きずり込んだ。

『アレン君!!』

伸ばした手は空しく空を掴み、アレンとの距離が開く。
SAKURAを発動しようと刀に手を伸ばすと、後ろからコムイに止められた。

『どうして!?』
「大丈夫、心配しないで。」
「イ…イ…イノ…イノセンス…」

その白いものから声が聞こえる。
大きな異型の生き物だ。それの触手がアレンの体内を探る。
そしてアレンは封じられた力をムリに発動させようとする。
私の右腕もそれに共鳴して光りだす。

「無理ムリ。麻酔で明日まで動かないって言ったでしょう?」
「!コムイさん…っ」
「キミの十字架はとってもすばらしいよ、アレン♪
どうだいヘブラスカ?
この神の使徒はキミのお気に召すかな?」
『アレン君、落ち着いて…』

やっと状況が理解出来てきた私は、諭すようにアレンに語りかける。
でも彼には余裕がない。
私の声も聞こえていないだろう。

「冷静だね。」
『師匠に鍛えられたみたいです。
アレ、ヘブラスカって言うんですか?』
「そうだよ。」
「うわぁあああああ」

すると突然アレンが悲鳴をあげた。
無理な発動によって、彼の身体が崩壊を始めている。

「なんて子だ、麻酔を…
し…神経がマヒしてるのに、む…無理に発動しちゃ…ダメだ!」

ヘブラスカの額に教団のシンボル、ローズクロスが浮かび上がる。

「落ち着いて…私は敵じゃ…ない。」

するとヘブラスカはアレンの額に自らの額を当てカウントを始めた。
アレンも落ち着きを取り戻していく。

「…2%…16%…30…41…58…78…83%!」

カウントが終わるとアレンの腕が元に戻った。
私は身体の力が抜けてその場へ崩れ落ちる。
その寸前でコムイに支えられた。

『…バカ、心配させて…』
「もう平気だろう…
どうやら83%が今、お前と武器とのシンクロ率の最高値のようだ…」
「シンクロ率?」
「対アクマ武器発動の生命線となる数値だ…
シンクロ率が低いほど、発動は困難となり適合者も危険になる…」

そう言って、ヘブラスカは私の隣へアレンを下した。
彼はコムイの手から私をひったくると、そっと肩を抱く。

「おどかすつもりは無かった…
私はただ…お前のイノセンスに触れ、知ろうとしただけだ。」
「僕の…イノセンスを知る…?」

アレンの問いは綺麗に無視され、ヘブラスカは話をすすめる。

「アレン・ウォーカー…お前のイノセンスはいつか黒い未来で偉大な《時の破壊者》を生むだろう…
私にはそう感じられた…それが私の能力…」
「破壊…者?」

そこに呑気な拍手が聞こえてきた。
コムイが満面の笑みで立っていた。

「すごいじゃないか〜♫
それはきっとキミの事だよ〜!
ヘブラスカの予言はよく当たるんだから。」
「コムイさん…」

私にはアレンの中で、何かがキレる音が聞こえた。

バキ

鮮やかなアレンの右ストレート…それは勘のよいコムイにあっさり書類で防がれた。

「一発殴っていいですか?」
「やだな♫もう殴ってるよん。
ごめんごめん。ビックリしたんだね。」

バコ

後ろから私は彼の鳩尾に蹴りを入れる。
これは綺麗にきまった。呻きながら座り込むコムイ。

「アヤ、ちょっとやり過ぎかも。」
『アレン君のパンチがきまってても、こんな感じよ。』
「ひどいなぁ〜
入団するエクソシストはヘブラスカにイノセンスを調べてもらうのが規則なんだよ。」

またまた私たちはハモる。

「『そーゆうことは初めに言ってくださいよ/言いなさいよ!』」

剣幕に押されて、今にもコムイはエレベーターから落ちそうだ。

「ところでイノセンスって一体なんの事ですか?」
『そっか、アレン君は知らないんだっけ…』
「その前に、アヤくん。
キミのイノセンスも調べようか。」
『アレン君の苦しみを見た後はイヤなんだけど…』

そしてヘブラスカに身をゆだねた。

「2つのイノセンスを…?」
『いえ、刀のイノセンスは母のものです。』
「ともかく…右腕の対アクマ武器から調べて…みよう。」

身体の中に異物が侵入してくる。

『くっ!!』
「ちょっとキツいかもしれない…我慢してくれ…」

右腕が強い光を放つ。
まるで侵入者に反応するように。

「3%…18%…29…36…53…68…74…83%!」
『…アレン君と同じ?』
「クロス・マリアンが言うのも…正しいかもしれない…
アレンとアヤは…2人で1人のようだ…」

ヘブラスカの言葉にコムイは息を呑む。

「ヘブラスカ、刀の方も調べてくれるか。
アヤくん、もう少し耐えて。」
『…はい。』

刀の方では、あまり気持ち悪くなかった。
装備型だからだろうか?

「4%…13…24%!」
「低くないか?」
『私のものではないから…?』
「これは…使わない方がいい…」
『分かったわ。』

荒い息を整えながらアレンの隣に降りる。

「大丈夫?」
『…たぶん』

彼に支えてもらいながら、どうしても知りたいことをヘブラスカに尋ねる。

『ねぇ、ヘブラスカ。
どうしてこのSAKURAは発動したの?』
「お前の望みに…答えたのだろう…
誰かを助けようと思ったのではないか…」
『望み…』
「アヤ…その対アクマ武器は…お前が使いたいと思った時に使えるだろう…」
『母さんが私の思いに反応するから?』
「あぁ…だが…それはお前の身体に大きな影響を与える…だからなるべく使ってはいけない…」

そしてヘブラスカは私への予言を口にした。

「羽蝶アヤ…
お前は「時の破壊者」と共に世界を導くだろう…
イノセンスはその道標…
未来はお前の選択だけで闇に沈むか光に満たされるか決まる…
私にはそのように感じられた…」

その後、私はSAKURAの中のイノセンスをヘブラスカに預けた。
両親を安らかに眠らせるために…

「しばし眠れ…イノセンス…」

ヘブラスカの体内に納まった母のイノセンスを見届け、私は深々と頭を下げた。

『よろしくお願いします…』

涙を流す私の肩にアレンは静かに手を置いた。

―愛されてるね、アヤくん…―

コムイは2人の様子を微笑みながら見ていた。

「それでは本題に戻ろうか。」

いくら微笑ましい光景が目の前に広がっていようと、今は戦争の真っただ中。
そして彼は室長という地位の人物だ。

「『はい』」
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