黒白Rhapsody(D.Gray-man)

□第2夜
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「イノセンスは、これからの戦いに投じるキミ達エクソシストに深く関わるモノ。」

私は既にこの話を師匠から聞いている。
だからアレンも知ってるものだと思っていた。

「このハナシを知ってるのは黒の教団とヴァチカン。」
『そして千年伯爵だけよ。』
「すべては約百年前、ひとつの石箱(キューブ)が発見されてから始まった。」


後生いの者達へ…
我々は闇に勝利し
そして滅びゆく者である
行く末に起こるであろう禍(わざわい)から
汝らを救済するため
今ここにメッセージを残す―


「そこに入っていたのは古代文明からのひとつの予言と…
ある物質の使用方法だった。」
「ある物質って?」
「その石箱自体もそれだったんだが、《神の結晶》とも呼ばれる不思議な力を帯びた物質でね。」
『私たちはその力を《イノセンス》と呼んでるの。
私たちの手にある十字架のことよ。』
「そして対アクマ武器とはイノセンスを加工し、武器化したものの呼称なんだ。
石箱の作り手は、そのイノセンスをもって魔と共に訪れた千年伯爵と戦い、打ち勝った者という。」

―伯爵…!!―

アレンの顔が一瞬険しくなる。
そっと彼の手をとる。するといつもの笑顔の彼に戻った。
アレンには笑顔の方が似合う…

『でも世界は一度滅んでしまった。
それが旧約聖書に記されてる“ノアの大洪水”よ。』
「石箱はそれを“暗黒の三日間”と記しているけどね。
そして石箱の予言によると、世界は再び伯爵によって終末を迎えるらしい。」
『実際、伯爵はこの世界に再来しているわ。』
「そのとおり。ヴァチカンはこの事実により石箱のメッセージに従うことにしたんだ。
それがイノセンスの復活と黒の教団の設立。」


使徒を集めよ!
イノセンスはひとつにつきひとりの使徒を選ぶ
それすなわち《適合者》!!
適合者なくば、イノセンスはその力を発動しない!!


「イノセンスの適合者、それがキミ達エクソシストのことだ。
だが伯爵もまた過去を忘れていなかった。
神を殺す軍団を造り出してきたんだ。」
『…それがAKUMA』
「あの兵器はイノセンスが白ならば、黒の存在である暗黒物質《ダークマター》で造られている。
進化すればするほどその物質は成長し、強化されていく。
伯爵はイノセンスを破壊し、その復活を阻止するつもりだ。
イノセンスはノアの大洪水により世界中に飛散した!!!」
『その数、全部で109個。
各地に眠るイノセンスを回収し、伯爵を倒せるだけの戦力を集めること。
それが伯爵を倒す唯一の方法。』
「しかし伯爵もまたイノセンスを探し、破壊すべく動いている。
イノセンスの争奪戦だ。」
『そして私たちがこの聖戦に負けた時、終末の予言は現実となり、世界は終わりを告げてしまう…』


戦え
それがイノセンスに選ばれたお前達の宿命…宿命なのだ…


「ま、そんなところだ。
以上で長い説明はおわり♪
一緒に世界の為にがんばりましょう、一銭にもなんないけどね。」
「…はい」

アレンとコムイは固い握手を交わす。
それが終わるとコムイは私にも手を差し出す。

「アヤくんもよろしく。
キミって科学にも詳しいみたいだね。
僕らの班を手伝ってもらえれば嬉しいんだけど。」
『いいですよ。お役に立てればいいんですが。』

握手するために私は彼の手をとった。

『よろしくお願いします、コムイさん。』
「ようこそ、黒の教団へ!
現在エクソシストはキミ達の入団で20人となった。
ほとんどは世界各地に任務で点在してるけど、そのうち会えることもあるだろう。」

そしてコムイはヘブラスカの方を向き直った。

「ちなみにヘブラスカもエクソシストの1人だよ。」
「『えっ!?』」
「お前達と…タイプはだいぶ違うが…
私は例の石箱の適合者として…教団の創造時からずっといるイノセンスの番人だ…」

するとヘブラスカは優しく微笑み言った。

「たくさんの…エクソシストと出会ってきた…
アレン…アヤ…
お前達に神の加護のあらんことを…」


私たちはその場を立ち去り、それぞれの自室へ案内してもらった。
私たちの部屋は隣同士。
でも私にとって、1人部屋は広すぎる…
部屋の大きさは今まで生活してきた部屋と特に変わりはないが、アレンがいない。

―…怖い―

私は荷物を床に放り投げて隣の部屋に駆け込んだ。

「うわっ、アヤどうしたの?」
『…』

私は彼にしがみつき、答えない。

「もしかして1人部屋だと寂しいの?」

静かに頷く。
すると彼は笑いもせず、私の頭を撫でた。
それだけで落ち着く。

「僕も慣れないよ。今日はここに泊まる?」
『いっそのこと2つの部屋を繋げちゃえばいいのかな?』
「勝手にしたらダメでしょ…」

落ち着いた私たちはドサッと床に座る。

「ふ―」
『今日はなんか疲れたね…』
「初めて来た場所だから仕方ないよ。」
『ねぇ、アレン君。リリーが何処行ったか知らない?』
「あっ、そういえばティムキャンピーも…」

そう言いながら彼は首を壁の方に向ける。
視線の先を追うと、ベッドの上の壁には数枚の絵が飾られている。
最も大きい絵には棺桶を背負ったピエロが、手錠をされたまま歩いている様子が描かれている。
しかしそのピエロは笑っている。

「やっと…ここまで来たよ、マナ。」

アレンが絵に語りかける。
その目は決意を固め、輝いていた。

「やっとスタートラインだ。
《立ち止まるな》《歩き続けろ》
あんたがいつも言ってた言葉…」
『宿命なんて関係ないわ。』
「アヤ…」
『この道は私たちの意志で選んだんだもの。』
「誓うよ、マナ…何があっても立ち止まらない。
命が尽きるまで歩き続けていく。」

―彼女と共に…―

こうして私たちのエクソシストとしての道が始まった…

↓あとがき


区切りがいいのでこのへんまで。
神田は何を感じているのか…面白くなってきました。

✛Anita✛
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