黒白Rhapsody(D.Gray-man)

□第10夜
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私と別れたリナリーはラビたちと合流していた。
ラビはボロボロになったリナリーを槌に乗せ、私たちを探す。

「空で強い光が見えた。どれだけ探しても見つけられないの…!!」

ラビの頭に私たちの笑顔が浮かぶ。
キスをされた頬に触れながら…

『いってきます。』

頭の中の少女が言う。

―生きてろよ、アヤ…―

「見つかるさ。」

その時、アクマに追われているティムキャンピーを発見。
アクマをすべて破壊し、2人はティムのメモリーを頼りにあの竹藪へ向かった。
あの血塗れた竹藪へ…

「ティムのメモリーだと、ここでアレンとアヤと別れたみたいさ…
ノアと遭遇して、腕を壊されたあいつらは、スーマンのイノセンスだけでも守ろうとしたんだ。」

リナリーがしゃがみ込み、私たちの血の跡に触れる。

「血の跡…ここにいたんだ…」

涙が彼女の頬を伝った。

「でもいない。どこにも2人がいない…!!」

ラビは近くに落ちていたスペードのエースのトランプを拾う。
そこにブックマンから連絡が入った。
“港へ戻れ。使徒がきた”…と。
2人が帰った港で待っていたのはアジア支部のサモ・ハン・ウォン。
アジア支部長の伝言を伝えに来ていたのだ。

「こちらの部隊のアレン・ウォーカー、及び羽蝶アヤは、我らが発見し引き取らせて頂きました。」

リナリーは喜びのあまり、ウォンに近付き、私たちに会わせてくれと頼む。
しかしウォンは静かに首を横に振った。

「あなた方は今すぐ出航なさってください。
2人とはここでお別れです。」
「リナリー、お前もティムのメモリーを見ただろ。
あいつらはイノセンスを失ったんだ。」

ラビが現実を告げる。

「あの時点でどのみち2人はエクソシストじゃなくなった。
…オレ達は進まなきゃならないんだ。」

そこにミランダがやってきて壊れた船を修理。

「出航!!」

マホジャの声で、船は日本に向けて旅立った。
私たちを中国に残して…

リナリーはずっと自分を責めていた。
自分が離れなければ私たちがイノセンスを失うこともなかった、と。
見かねたラビは怒った。
これは戦争なんだ、仕方ないことだ!と、自分に言い聞かせるように。

―オレも同じなんさ、リナリー。
オレがアヤを行かせなければ、あいつだけでも助かったかもしれない…―

「オレらは昨日必死に戦った。
どうしても助けらんなかったんだよ…っ!
戦争なんさ、しょうがねェだろ!!諦めて立てよ!!!」

リナリーの目から涙が流れる。
それを見てラビが言葉を失った。
ブックマンがラビに近付き、ひそかに告げる。

“ブックマンたるもの、戦争にはまってはならない。何事にも傍観者でなければならない。”と…

今のラビにはキツイ言葉だった。

「それに、私には“時の破壊者”“破壊者と共に世界を導く者”と予言を受けたあの2人が死んだとはどうも信じられん。
室長殿に頼み込んでクロス部隊に入れてもらったのは、あの2人に興味があったからでな。
時の破壊者の“時”とはある人物を指しているのではないかと。」

そしてブックマンはニヤリと笑った。

「“時”…“千年”…
アレン・ウォーカーと羽蝶アヤは、千年伯爵を破壊する者ではないだろうか。
ならばこんな所で死ぬハズが無い。」

ミランダのイノセンスで復活した船と船員は海を突き進む。
しかし便利なように見える彼女の能力はとても哀しいもの。
発動を解けば体に傷が戻り、致命傷を追えば死ぬ。
それを知っておかなければ、生きていられない。

こうして厳しい旅が始まった。



こないで…
月が段々大きくなっていく…
アレン、貴方はまだ生きてる…?
逢いたいよ…独りは怖い…
貴方に伝えてないことがたくさんあるの…
だから…まだ死ねない



ここは…どこだろう…
白くて大きい月…
現実味のない世界…
僕は死んで死後の世界に来たのか…?

アヤ…キミを守れなかった僕を許して…
すぐに会いに行くから…
色のない、黒の世界…

アレンは小さく微笑み、ふと周りを見渡す。
そこは何もない世界
そして彼の下には湖があり、水面の向こうには鏡のように反転した世界ではなく…

あれ…?
空の月は白いのに…この水面の月は黒い

アレンが存在する世界とは違い、色の無い世界が広がっていた。
巨大な瓦礫、見覚えのある建物跡
そして黒い髪の少女

リナリー!?
どうして…ここは死後の世界じゃないのか…?
あの残骸は…?
まさか、そんな…みんなはどうしたんだ?
戦争は…?

そこに現れる小さな影。
それはアレンの後ろに立った。

「誰…?」
『アレン…』
「…アヤ!?」

私はアレンの隣に立つ。
ここは夢の世界?それとも死後の世界?
分からないまま、私たちは水面に映る向こうの世界に目を向ける。

『行かなきゃ、リナリーの所へ…』
「うん」

私たちは水面に手を伸ばす。

ガシッ

しかし水面に映ったアレンの手が、逆にコチラへ伸びてきて、強く腕を掴んだ。
私の腕も同様。

「ダ…メ…」

とても恐ろしい声が聞こえた。
腕を掴む力が強すぎて、振りほどけない。
必死にもがいているうちに、湖が凍っていく。

「水が凍って…!?」
『リナリーっ!!』
「くそっ、放せ!!!」

涙を流すリナリーの姿が隠れていく。
そんな私たちが見たのは…

「ダメ…」

水面に映った、アレンによく似た少年と、私と同じ黒髪の少女。
彼女はローブのように長い白い服を着ていた。

『誰…貴女…?』

唖然としながら問えば、水面の2人はニタリと不気味に笑った。
そして水中に私たちを引きずり込もうとする。

「放せ!」

―振りほどけない…―

残された手でアレンの手を掴む。
彼も怯えているのが分かる。
もう駄目だ…と諦めかけた時、暖かい光が辺りを包んだ。
それはよく知るもの。ずっと一緒に生きてきたソレ…

―イノセンス…?―

その光は私たちを掴んでいた腕を消し、私たちを目覚めさせた。
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