黒白Rhapsody(D.Gray-man)

□第14夜
7ページ/8ページ

「2人を離せ…」

そしてアレンがジャスデビの怨念という名のドロドロした物体から抜け出してきた。

「ハハッ、あいつの地雷踏んだか?」
『ア…レン…』

こっちに向かってくるアレンに向かってジャスデビは何かを撃ちだした。
それは何と…!!

「伯爵っ!!」

丸みを帯びた巨体
おしゃれなシルクハット
にたりと笑う口元…

「威力は本物だ!」

アレンとクロウリーが偽伯爵と戦っているところに双子の呑気な声がする。

「その千年公は〈笑ってる〉×〈けど〉×〈実はすっげー怒ってる時の〉×〈千年公〉だ!」
「ヒッ!笑いながら怒ってる千年公は超怖いんだ!」

偽物とはいえ、伯爵の威力は本物と同じく強い。
アレンとクロウリーは敵を超えて私とリナリーの元へと急ぐが、足止めを食らうばかり。
2人がボロボロになってきた時、リナリーが私を強く抱きしめ言った。

「あなたたちってまるで子供じゃない…」
「はぁ?」

リナリーの呟きにデビットが反応する。

「いきがってバカみたい!
あなたたちのやってることなんて、ただの幼稚な遊びだわ!
命の重みを知ってるアレンくんやアヤの方がずっとずっと強いわよ!!」

そう言った瞬間、デビットは力任せにリナリーの頬を殴った。
そして彼女は私の横に倒れ込んだ。

『リナリー!』

デビットは何度も殴ろうとする。
だから私はリナリーの盾となって庇った。
それでもやまないデビットの拳は私の頬を殴り続ける。
口から血が流れるが気にしない。
それで少しでも仲間のケガが減るならば。


その時、部屋全体に眩しい光が差し込んだ。
中央のモニュメントに鍵穴が開いた。
そして書庫を強い風が走り抜け、偽物の伯爵も吸い込まれていった。

―あれが、次の扉…―

顔についたペイントが消えていく。

『ラビ…!!』

次の瞬間、アレンとクロウリーは拳を握り双子に向かっていった。

「「見っ――――えっ―――――たぁっ!!!」」

彼らは双子を殴り飛ばした。
ジャスデビは戦いの反動で本棚に突っ込んだ。

「おい…なんで左手でやらなかった。」
「爪が邪魔で握れないんですよ。
アヤとリナリーを殴った分を、まず返したかったんで…」

それから盛大に息を吐き出して言った。

「「とりあえずスッキリした!!」」

その口調からして相当イライラしていたのがわかる。
アレンが私たちが捕らわれているボールを割る。
クロウリーがリナリーの手を取り支える。

「アヤ。ごめんね、遅くなって。大丈夫?」
『平気…』

その時、身体がふらついてアレンに支えられた。
貧血と頭や頬を強く殴られたことによって意識が朦朧としていたのだ。

「嘘吐かないで!足元フラフラじゃないか!!」
『頭…殴られたから…』
「それに私を庇って殴られたから…」

私はアレンにもたれたままリナリーの手を握る。

『いいのよ、リナリー。私が勝手にしたことだから。』

小さく微笑むと彼女はぎこちないものの微笑み返してくれた。
彼女の頬も少し紅い。
私の頬は腫れているだろう。
そして顔の右半分は血で赤いはずだ。

『先を急ごう…?』

その時、背後から冷たい気配を感じた。

「「ガキガキって…マジ、ナメてね…?」」

暗い声が響く。
そして本棚から身体を離した双子が先程までの感情豊かな様子からは考えられない、
まるで能面のような表情で立っていた。

「遊びはやめた…」
「マジで消しちゃうわ…ッ」

―何かが始まる…!!―

私たちはラビと合流し身を寄せ合う。

「まったく疲れる。
あのノアの能力は次に何が来るか予想がつかん…
ふざけてると思ったら突然キレだす。
ガキは扱いづらくて嫌だ。」

クロウリーの言葉に反応するように、ジャスデビは歌いだした。

ゆりかごが ひとつあった…
…ゆりかごにひとつが在った
…ひとつはふたつに為った
ゆりかごひとつ 霧に紛れて星ひとつ
墓場でゆれて消えてくよ…

ジャスデビは互いの米神に銃を押し付け微笑んだ。
そして…引き金を引いた。
双子の身体が傾き、影が集まっていく。

「撃ち合った!?」
『どう…して…!?』

私とアレンが叫ぶ。
そのとき隣にいたクロウリーが消えた。

『…えっ?』

彼の襟首を何かが掴み、そのまま本棚にぶつけられる。
大量の血が本棚に広がり全体が真っ赤に染まった。
私の目に映ったのは彼が私に手を伸ばしながら離れていく姿。

グシャッ

「ク…クロウリー…ッ」

変わり果てた仲間の名を呼ぶことしかアレンにはできない。
クロウリー自身から返事はなく代わりに聞こえてきたのは…

「「まず1人…」」

2つの音色が重なったような声を持つ、1人の青年。
金髪に奇抜な黒のメッシュで染めた長い髪
血のように紅いレザー

「誰だ…ッ!??」
「「僕らは…ジャスデロとデビットは本来ひとつのノアなんだよ…」」

そして笑顔で名乗った。

「「“ジャスデビ”だッッ!!!」」
『…最悪。』
「よくも…クロウリーを!!」

アレンの声で再び戦闘は始まった。
私はリナリーとチャオジーと共に壁に寄る。
血を流し過ぎて身体が言うことを聞かない。
ジャスデビの力に圧倒されるアレンとラビを助けに行けない自分に腹が立つ。
その時、アレンに強い光が襲いかかった。
そこから生まれた稲妻が彼の身体を焼く。

「あぁ…っあっ!」
『アレン!!』

次の扉にアレンをぶつけて壊そうとするジャスデビ。
その扉の下には私たちがいる。

―このままじゃ3人を巻き込んでしまう…っ!―

そんなアレンを助けたのはクロウリーだった。
クロウリーの口から滴るアクマの血。
ちょめ助がくれたアクマの血の小瓶を1瓶飲んだようだ。
1度敵から離れ、私たちの前に立つアレン、ラビ、そしてクロウリー。
その瞬間クロウリーがふらついた。
アレンとラビがすかさず支えると2人の手にべっとり血がつく。

「大丈夫である…」
「クロウリ…これ…この傷…」

アレンは血で濡れた手袋を見て言葉を失う。
ラビは大量の血に息を飲みながらも囁くようにクロウリーに尋ねた。

「ちょめ助からもらった血の瓶はあと何本残ってるさ…?」
「…3本」

そんな会話を邪魔するように敵の攻撃が攻めてくる。

「ここにいたらアヤたちを巻き込んでしまう!」

アレンたちは別々の方向に散り戦う。
しかし押され気味だ。
その時、クロウリーがジャスデビを羽交締めにした。
そして床に亀裂が入り始める。

『ッ!この部屋も崩壊が始まった!?』
「急がないと。」

そこにクロウリーの信頼に満ちた強い声が響き渡った。

「早くッ!この部屋も限界である!!
私の傷ではそう長くは戦えない。だから、行け!
アレン…ラビ…
お前たち2人しかこの先アヤやリナリーを守れる者はいない!
信じておるのだぞッッ!!行けえぇッ!!!」

―ねぇ、どうして…?
私は仲間のことを信じて戦ってきたのに…
どうして今はこんなに信じることが苦しいの?―

『信じることも大切なんだ…』

私はリナリーの腕を掴んだ。

『行くよ。』
「アヤ?」
『みんな、走れ!!クロウリーを信じて!!』

叫びながら走り、一瞬私は振り返った。
私たちを追って来るアレンやラビの後ろでクロウリーが笑った気がした。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ