黒白Rhapsody(D.Gray-man)

□第22夜・番外編1
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それからすぐ私たちは鴉に連れられ退出することになった。
でも最後にクロスが言った言葉を理解出来ず、立ち去ろうとする師の背中に喰ってかかった。

「まて…まてよ!」

鴉に身体を押さえられ連れ去られそうになる私の隣でアレンが叫ぶ。

「僕らが大事な人を殺すって、どういう意味ですかッ!!!」

クロスの“お前は大事な人を殺さなきゃならなくなる”とはアレンのこと…
何故ならアレンが14番目になった時、私は消えてしまっているから。
それでも彼は“2人”ということにこだわってくれる。
だから“僕ら”という言葉を使う。

「師匠ぉッ」
「“14番目(自分)”にきけ。」
「『!?』」
「この戦争にゃ裏がある。
今度は途中で死ぬんじゃねェぞ。」

こちらを振り返りもせずクロスは言う。

「時間です、ご退室を。」
「うるせェな、わかってら。」
『待って、マリアン!!』
「面会は終了です。」

叫ぶ私たちに鴉は冷静に告げる。

『はぁ!?』
「物騒な捨て台詞残していくな―――――!!!」

それでも止まらないクロス。
キレたアレンは近くを飛んでいたティムキャンピーを口で咥え、身体全体で投げた。
ティムはクロスの後頭部に命中。

「ッのぉ…まってって…
言ってんでしょ、バカ師――――ッ!!」
『アレン、ヤバイ…』

彼は術の所為で身体が重くゼェゼェ言っている。
そして…クロスもキレた。
鴉に止められながらもこちらを向く。

「ん?ナニ?よく聞こえない。」
「こ…ここに入団した日…
何があっても立ち止まらない、命が尽きるまで歩き続けるってマナに誓った。
誓ったのは僕らだ!」
『他の誰でもなく私たちなのよ、マリアン。』
「!」

ラビは一生懸命言葉を発す私たちを見つめる。

【そうだ、僕は誓った…】
【アレン…】

「自分が…“14番目”のメモリーにどこまで操られてたのかなんてわかんないし、マナのことも正直どう受け止めたらいいのか迷ってる。」
『私がアレンと出逢ったのも、そのメモリーに操られた所為かもしれない。
でもアレンのことを愛する気持ちに嘘はない。』
「僕は今でもマナが大好きだ。
そしてアヤのことを心から愛してる。
今の僕を支えている最も大きな存在だから。
このキモチだけは絶対…ッ
本物の僕の心だと思うから。」

アレンは必死に想いを口にする。

「だから僕は僕の意志でマナへの誓いを果たす。そう今決めた!」
『私はずっとアレンと共に歩いていく。
いくらその道が棘だらけでも、間違った道を歩んだら私自身が消えてしまうとしても、今私が生きているのはアレンのお陰だから。
私はアレンが言ってくれた“独りにしない”っていう言葉を信じるわ!!!』
「“14番目”なんか知るもんかッ!!」

アレンはべぇぇっと舌を出す。

「それだけは絶ッッ対譲りませんから!!!
師匠の馬鹿――――ッ」

連れ去られるアレンの隣で私はクロスを見つめる。

『マリアン、私は…ッ!!』
「自分の想いを貫け。」

そして彼は優しく微笑んだ。

「愛している、アヤ…」

彼はそれだけ言うと退室した。
その言葉は愛娘への想いのようだった。

『マリアン…』

そして私も鴉に退室させられたのだった。


私たちの会話をスピーカーを通して聞いていたコムイ、ルベリエ、そしてブックマンのもとにラビが帰ってきた。

「師匠の馬鹿ーーーッッ」

アレンの声が聞こえた瞬間、コムイの顔が曇る。

「というワケです、室長。
貴方にとっては残念な結果でしたかな?」
「…」

コムイは言葉を失う。

「“14番目”の目的は我々と同じ伯爵です。
敵とはいえません。」
「それは“14番目”がなぜ伯爵を殺したいかによりますでしょう。
ターゲットが同じというだけでは、彼らが悪しき者ではないという証にはなりません。
我々に牙を向けない保証はどこにもない。亅
「…っ」

悔しそうな顔をするコムイをラビはじっと見つめる。

―コムイ…庇いようがねェな、これは…
中央庁は完全に2人を危険とみなした。
まだアヤは巻き添えにされただけだから、いいかもしれねェけど。―

彼は隣に立つブックマンに小声で言う。

「なぁじじい、元帥が最後に言った“この戦争の裏”ってなんのことだろうな…?」

ブックマンは冷や汗を流していた。

「?じじい?」
「戻るぞ、ラビ。」
「えっ」
「“裏”はワシが許すまで頭の隅にしまえ。
二度と口にするな、いいな?」

ブックマンはそのまま部屋を出た。
それを追うようにルベリエが立ち上がる。

「この件は明日、教団幹部とエクソシストらの前で当人らを交え公にさせて頂きます。」
「明日…ッ!?」
「アレン・ウォーカー…及び、羽蝶アヤの処置についてもその時に発表いたしますので。」
「…それは教皇のご決断ですか?」
「おやすみなさい。」

コムイの言葉を無視しルベリエは扉をパタンと閉める。
コムイはその扉を見つめることしかできなかった。
部屋の外には先ほどまで私たちを見張っていた鴉が並んでいた。
端に立つ人物にルベリエは指示を出す。

「面会中の見張り、ご苦労でした。」
「「「「はっ」」」」

鴉4人が応える。

「途中、クロス・マリアンがゴーレムに何か仕込む仕草がありましたが、如何いたしますか?」
「ふん。引き続き彼らの調査はキミに任せます。“ハワード・リンク監査官”。」
「はっ」

…4人のうち端にいたのはリンクだった。


私とアレンは着替えを済ませ、もとの団服姿に戻ってから図書室へ向かっていた。固く手を繋いで。

「…ごめん、アヤ。」
『何が?』
「僕の所為で巻き添えになって、僕が“14番目”になったらアヤは消えてしまう。」
『いいの、私は後悔してないから。
アレンと一緒にいれるなら何でもいい。
生きてる理由は人間とアクマの救済、そしてアレンと共に歩むことだから。』
「アヤ…」
『でもね、アレン。“14番目”になることは考えないで。
絶対闇に打ち勝ってやるわ。』
「そうだね。頑張らないと。」
『このことはすぐにみんなに伝えられるわね。
でも今だけは黙っておこう?』
「…うん。」

そして辿り着いた図書室でリナリーとジョニーはソファで仲良く眠っていた。
アレンがそーっと毛布を掛けようとした瞬間、リナリーが目を覚ます。

「アレンくんっ!?」
「『あ』」
「アヤ!!」

―わ――――っ、寝ちゃった!!―

「に、兄さんたちは?」
『まだ奥で話してるわ。』
「リナリー、そんな動くとジョニー起きる…」

2人に毛布を掛け、私とアレンはリナリーの隣に座る。
リナリーの隣に私が腰掛けると、アレンが自分と私に毛布を掛けた。
その様子を見ていたリナリーが声を上げる。

「アレンくん、顔腫れてない?」
「師匠に殴られちゃって。」
「大丈夫?」
「うん。」
『あれはアレンが悪いのよ。』
「僕の所為?」

小さく笑うが私もアレンもどこかぎこちない。
それを察したリナリーはきょとんとする。

―あ…れ…?―

「なんでもなかったよ。」
『そう、なんでもなかったの…』

そしてそのまま私たちは眠りについた。
リナリーの頭が私の肩に乗り、ジョニーは彼女の膝を枕にして眠っている。

『…アレン、起きてる?』
「…うん。どうしたの?眠れない?」
『まぁね。』

私はリナリーを起こさないように気を付けながらアレンの顔を見上げる。
彼も私を見下ろしていた。目と目がぶつかる。
彼はそっと私にキスをして、また離れていった。
私は彼の胸にもたれかかって言う。

『マリアンに愛してるって言われた。
今までそんなこと言ったことないのに。』
「それが男としてだったら僕は怒るよ。」
『ふふっ、マリアンは父親みたいなものだから。
娘に向けた愛情じゃないかしら。』
「それならいいけど。
…なんかマナみたいじゃないか。」
『同感よ、アレン。
だから…嫌な感じがするの。
もう会えないなんてこと…ないわよね?』
「…ないよ、絶対。だって僕らの師匠だよ?」
『…そうよね。』

私はアレンに髪を撫でられながら目を閉じた。
次に目が覚めたのは朝。まだ外は雨。

『朝…か。』
「新しい日だよ、アヤ。」

アレンも目を覚ます。
ただやはりそこには明るさが欠けていた。
それは天気の所為か。それとも私たちの心の所為か…
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