黒白Rhapsody(D.Gray-man)
□第25夜
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「あぁ、教団の彼奴等(きゃつら)よ」
スカルたちが私たちのいる孤児院を見て呟く。
そこには馬車に乗った元怪盗G(もどき)のファインダーとジジ、リーバー、2人の中央庁組、そしてガルマー。
「応答ねーぞ?」
「っかしーなぁ。
マリからの連絡でこの孤児院に行くつってたらしいんだが。」
着替えて本来の教団員としての格好に戻ったファインダーとジジは孤児院を調べ、建物を見上げる。
「窓の奥に人影も見当たらないし留守じゃないのか?」
「じゃ、マリたちどこ?」
「さぁ〜〜〜〜〜」
「「…」」
ちらっとファインダーたちが後ろを振り返ると、馬車の横に立つリーバーたちを見る。
「わぁ〜〜〜〜すっごい見てるよ。」
「見てンな〜〜〜〜」
そこにはイライラしているガルマー。
ぶっすぅぅっとした顔で彼はリーバーの隣に立っている。
「馬鹿馬鹿しい!
ここは顔見知りの孤児院ですよ。
こんなところに怪盗Gがいるわけないでしょう。」
「ご説明したでしょう、警部殿。」
「“イノセンス”とやらですか。
本当にそんな不思議な力をもったもんが存在するんですかねぇ。」
「するんですねぇ。」
―オカルト集団め…―
「(中央庁の圧力に屈した)上の判断なので仕方なく協力しますが、
もしここからその“イノセンス”が出てこない場合は即刻お仲間はこちらに返して頂きますよ。」
「煮るなり焼くなりお好きにどうぞ。」
リーバーは冷たい爽やかな笑顔で答える。
「ただし出たら怪盗Gは我々に引き渡してくださいよ。」
「いぃ〜〜でしょうぅ〜〜〜〜」
さすがリーバー班長。コムイと長年いるだけあって、言葉巧みに警部を説得した。
その様子を見ていた中央庁2人組は小さな声で囁き合った。
「兄様、この建物なにか妙な感じがいたしますわ。」
その頃、ジジはファインダーと共に孤児院のドアを調べていた。
「どうした、ジジ?」
「…この建物おかしい。」
「なにが?」
ジジはナイフでドアをこすりながら言う。
「どこけずってもまったく傷がつかねぇんだよ。…銃かして。」
「え?はい。」
「アジア支部にも似たようなもんがある。
ありゃ支部長のじいさんが造った扉だが…」
そういうと彼はいきなり受け取った銃でドアを撃った。
ドドン
「「わっ」」
「うおっ、なにすんの、ジジちゃんっ」
「見ろよ!」
「!?」
「傷ひとつついてないっ!!」
放たれた銃弾はドアに当たらず、透明の膜にはね返された。
そしてドアには傷はつかない。
「こりゃ封印の結界だ!」
スカルはこの光景を見て、ふっと笑う。
「化学班がおったか…」
「さぁ、焦るがいい。この結界は決して人間には通れん。」
するとその言葉通り、ドアの前の人々は慌て始める。
「マリーっ神田―――――っ」
「聞こえっか、アレーン!返事しろ、アヤ!!
いんのか、おい――――っ」
「くっそ、はいれねぇ〜っ」
「バカ無理だ!結界を解かねぇと…」
するとあの中央庁の2人のうち1人がジジたちに近づいた。
「どけ。」
そしてドアに手を添え、中に入って行った。
「なにっ?」
スカルが驚いたのは言うまでもない。
「あんちゃんっ」
ティモシーを庇ったリンクは術でアクマの攻撃を受け止める。
しかし彼の体はひびが入り脆いまま。
[しぶとい奴めっ死ね死ぃね]
「亀裂がっ…体まだ元に戻ってねーじゃんっ
壊れちゃうよ、死んじゃうよ――――っ」
「ふんばれ、あんちゃん。マスター守ってぇ〜〜〜〜〜」
ティモシーと憑神が叫ぶ。憑神の声は届いていないが。
「そだっ、オレがあんちゃんに憑いたらイノセンスの力使えるんじゃね!?」
「ムリ!憑神がイノセンス化できるんはアクマだけや。」
リンクたちの様子を見て私とアレンは慌てる。
【早く行かないと…】
『リンク!!』
「そこをどけぇっ」
アレンがレベル4に向かって叫ぶ。
私たちはその声を合図にレベル4に向けて飛び掛かる。
[悪魔叫(あくまきょう)]
『ぐああぁぁああ』
エクソシスト4人とリンク、ティモシー、そしてエミリアが頭を抱える。
「い、いたいよ。頭がわれる…っ」
「マスター…」
「ぐっ…」
リンクの術が解かれ、レベル3の拳が彼を目がけて降ってくる。
―ダメか……長…官…―
グシャッ
だが彼は死を免れた。
中央庁のあの赤い服の人物(男)がアクマの拳を片手で受け止めたからだ。
[!!??エクソシスト…!?
いや、イノセンスの感じはしない…]
「3か…」
―!!この声…っ―
リンクはその声に聞き覚えがあった。
「発動」
すると男の腕が変形する。
掌に穴が開き、その腕は奇妙な形。
[なんだ?ボディが…っ?]
「喰ってやれ。喰機開闢孔(ガキカイビャクコウ)!!」
[吸う〜〜〜〜〜〜!!?]
その穴にアクマは吸い込まれていく。
[ぎゃああああぁぁぁあああああ]
ゴクンッ
男は何事もなかったかのように立っている。
―!アクマを…倒した!?―
リンクはそっとその男の名を呼ぶ。
「マダラオ…?」
男はゆっくり振り返ってリンクを見る。
「“鴉”のお前がなぜ…?」
2人の様子を私とアレン、神田、そしてレベル4は見る。
【アクマを吸い込んだ?それもイノセンスを持たない人物が…?】
【そんなことありえるのか…?】
【まぁ、今は目の前のレベル4をどうにかしないとね。】
【うん…】
「新手のエクソシストか…?」
『イノセンスはないってアクマは言ってたけど?』
私は神田の言葉に答える。
2人共、何が起きたか理解できていないのだ。
それはレベル4も同じく。
―ばかな。どうやってけっかいをやぶった…―
「まいったな。本気で今日はいいとこナシですよ…」
「てめーがいつまでもあっち気にして集中しねェからだろ、タコ。」
「神田、うるさい。」
『兎も角、殺るしかないわ。』
私とアレンは剣を肩にかつぎ、神田は六幻をレベル4に向ける。
[しぶといなぁぁ]
レベル4に私とアレン、神田は攻撃を仕掛ける。
するとレベル4の銃がアレンの目の前に向けられる。
「うおわっ」
その銃に剣を当てて体を反転させレベル4の上へ逃れる。
[みがるなやつ!]
そのうちに私と神田はレベル4の背後から攻撃する。
「“三幻式”!!爆魄斬(ばくはくざん)!!」
『神ノ道化!!!』
「『受けとれ!!』」
そう言う私たちの身体を銃弾が襲う。
そしてアレンが剣を振るった。
しかしレベル4がその剣を歯で受け止める。
『!!!』
「歯ッ!?」
レベル4はアレンを蹴り飛ばし剣を放す。
ガシャン
『アレン!!!』
彼は武器を失い降ってくる銃弾から逃げ惑う。
[しねしねしねしねしねッ]
「ぐ…っ」
「アレン!!」
―だめだっ
4の攻撃音がうるさくて状況がわからない。
ヘッドホンがあれば戦えるのに…くそっ―
マリが私たちの戦闘を感じながら思う。
レベル4は攻撃を続ける。
「なんてしぶとさだ、レベル4。
やはり元帥なしではムリなのか…?」
―勝てないのか、ウォーカー?アヤ…?―
リンクが倒れたティモシーを抱いて私たちに心で問う。