黒白Rhapsody(D.Gray-man)

□第25夜
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アレンはレベル4の背後に転がる剣を呼ぶ。
するとそれはレベル4を背後から貫きアレンに向かっていく。

[ぐあああぁぁぁぁああああ]

ドッ

そのまま壁にもたれかかっているアレンに突き刺さった。

[ガッ、ばかか…っ
おま…えもささっている…よ]
「これは邪悪なモノだけを斬る退魔の剣だ。
ノアやアクマにしか効かない!」

ズグッ

【【えっ…】】

「神ノ…道化…?」

アレンの口の端から血が流れ始める。
それと同時に私の頭に激しい痛みが走る。

『ぐっ…』
「アヤっ!?」

私はその場にうずくまり頭を抱える。

「おいっ、どうした!?アヤ!!」
『歌が…誰なの…っ?私に訴えるのは…誰…』
「何を言ってる?」
『助け…て…神…田…』

アレンはレベル4に言われていた。

[じゃあくなものだけを…?
なにをいっているのでしょう。
じゃあおまえはなぜくるしんでいる?]

ビキッ

「『がああぁぁぁぁぁあああああああ』」
「アレン?アヤ?」
「!!!」

私たちの叫び声に神田とマリ、リンクが反応する。
神田が私の肩を抱く。
私は彼の団服を強く握りしめ痛みに耐える。

―退魔の剣がこいつらに効いてる!?―

ドクンッ

私の鼓動が一度だけ大きく鳴り視界が黒一色に染まる。

{オ前ハ神ニ捧ゲル生贄…}
『誰…?』

その闇の中に2人の人物が立っている。
ピアノの部屋にいたアレンの影と同じ人物と、
私の生き写しのような白い服の女性。

『わ、私…?』
{ソウ、コレハオ前デアッテオ前デハナイ}
『どういうこと?』
{オ前ガ“アレン”ト生キルナラバ歌姫トナレ…}
『えっ…』
{“アレン”ガ14番目ニナッタラ、オ前ハ消エル…
ソレナラ歌姫トシテ“アレン”ト共ニ苦シメ
ソウスレバ、消エズニイラレル}
『それはノアではないのね…
ノアは14人しかいないもの。
私は“異形”として、アレンの…いえ、貴方の操り人形になるってこと?』
{ソノトオリ…マァ、モトモトオ前ニ拒否権ハナイ。
ヨリ深ク、闇ノ中ヘ…}

その声と共にもう1人の“私”が私に歩み寄る。
そのまま私を抱きしめ消えた。

{マタ会オウ、ソノトキハ“アレン”ト共ニ…}

その声を聞きながら、私は再び目を閉じた。
そのうちに瞼の向こうに光が蘇る。

「アヤ!!」

神田の声が聞こえる。
彼は私を抱き上げながら、あることに気付く。

―アヤの髪が…銀色?―

そう、私の髪の端が銀色に染まっていたのだ。
その他に変わったところはない。
ただ黒髪の端が銀色なだけ。

―どういうことだ…?―

『っ…』
「アヤ!」
『神…田…』

私の目が自分の髪の色にとまる。

『髪の色が…』
「これは…なぜだ?」
『…』

―歌姫…の影響か?―

「…兎も角、行くぞ。モヤシがまだ…」
『そうね。』

そして私は神田の手を借りて立ち上がった。

「くっ…」
[わけの…わからないやつ…きえちゃえ]

そして攻撃をアレンに向けて放とうとするレベル4。
だがその銃弾は放たれなかった。
アレンがレベル4の頬に右手を添えたから。

[!]

そこにいたのは口角を上げたアレン。
髪の雰囲気が変わり、オーラも黒くなる。
鋭い瞳のまま微笑むアレンは言う。

「オ…ハ…ヨウ…」

【?アレン…?】

―銀色の髪が戻らない。アレンがノア化しているのかしら…―

「アヤっ!」
『はいっ!!』
[のぁ…っ]

レベル4はアレンを見てそう呟いた。
目から涙が流れる。
その穏やかな時間を壊したのは神田の六幻と、私の右手の爪。
六幻がアレンの顔の横の壁に突き刺さる。
それでも彼の表情は変わらない。

【アレンっ!!アレン、どうしたの!?】
【歌姫…】
【!?】

―“これ”はやっぱりアレンじゃない…14番目だ…―

私の爪がレベル4の体に食い込んでいく。
そんな私の隣で神田が静かにアレンを見つめ、叫んだ。

「バカモヤシ!!」

その声に応えるようにアレンが剣を握る。

[なにぃ!!?]
「「『おおおぉぉぉぉおおおおおおぉぉお』」」

そのまま私たちは各々の方向へ手を引いた。
アレンの剣、私の爪、そして神田の六幻がレベル4を切り裂き、破壊した。
レベル4が残骸と化したのを確認して私は発動を解く。
アレンは剣を腕に戻し、神田は六幻を鞘にしまう。
壁に背中をつけ、地面に座り込んだアレンに私は歩み寄る。
私の髪の色はいつの間にか戻っていた。

『アレン…』
「…大丈夫だよ。」

そして彼はまだ鋭い“アレン”としての視線で神田を見る。

「…オイ」
「あ゛?」
「“アレン”だっていってんでしょ。」

神田は何も言わなかった。

その後、私はアレンを抱きしめた。

「どうしたの?」
『…私も貴方と同じになったみたい。
ノアではないけど、異形の歌姫…さっき、“14番目”が言ってたわ。』
「!?」
『髪の端が銀色に染まるの。それがノア化の合図。
これでアレンが14番目に呑まれても意識を失わない。
存在も消えないらしいわ。
でも14番目の操り人形と化す。』
「僕の所為で…アヤを巻き込んでしまった…」
『いいの、アレンの所為じゃない。
一緒に戦いましょ。ね?』

彼は一瞬目を見開き、私の笑顔を見た。
しかしすぐに微笑んで私の手を取ると立ち上がり仲間の元へ向かうのだった。
これはまだ悲劇の序章に過ぎないのだから…


孤児院の外ではリーバーも加わり結界を解こうと奮闘していた。
ファインダー3人とジジが建物の四隅に縄を持ってぶら下がる。
リーバーはジジの近くの屋上で待機。

「こいつか、この建物の四隅に1匹ずついるぜ。」

ジジが建物の隅にいる“閉”という字が背中に書かれたテントウムシを指さす。
リーバーはすぐにファインダーたちに連絡を取る。

「おそらく術者の媒体だ。
まずジジが1匹除去する他は結界装置で対象を包囲しろ。」
「「「了解!」」」

結界で包囲したのを確認し、ジジは箸のようなものでテントウムシ…もとい媒体を取ろうとする。

「はっくしょいっ」
「気をつけろ、ジジ!」

その様子をガルマーはイライラしながら見つめる。

「何が“結界だー”だ。オカルト信者共め。」

そしてガルマーは孤児院の扉に歩み寄った。
その頃、私たちは…

バキィ

「くっそ、開かねぇ!どうしたら外、出られるんだっ」

アレンと神田がそれぞれの対アクマ武器で扉を内側から何度も叩いた。…殴った?
私はマリの手に包帯を巻きながら呆れたように2人を見る。
私の足の骨にはヒビが入ったらしく立つたびに少し痛む。だが、すぐに治るだろう。

『アレンも神田も、落ち着いて?』
「でもマリの手の傷、早く診せないと…」
「魔導結界は内からは破れぬ。科学班を待つことだ。
彼らが有能であればだが。」
『科学班をバカにしないで。』
「てか、誰キミ?」
『…中央庁の人みたいだけど?』

―鴉?でもなんか違うような…―

緋装束の男は何も答えなかった。
そんな私たちと扉を挟んだ反対側にガルマーが立っていた。

「こんなドアがなんで開けられねェんだ?ったく!」

彼はドアノブに手を掛ける。
それと同時にジジが箸でテントウムシを取る。

ぺりっ
ガチャ

そして結界のことなんて知らないガルマーが扉を開く。
すると建物がボロボロになってファインダーたちに電気が走る。

「!!」
「なんだよあっさり開くじゃね………か?」

ガルマーは目の前にいる血だらけの私たちを見て唖然とする。
それはこちらも同じ。

「おまえら、なんで血だらけ…?」
「『なんで警部…?』」
「パパ!?」
「なんじゃこりゃああぁぁぁああ」

硬直する私たちの横を男が通り過ぎる。
その頃、建物の上にいたジジたちは…

「あっっぶねぇ。突然穴あくんだもんよっ」
「結界がとけたんだ。」

リーバーは尻餅をつき、ジジは建物の端にしがみつく。
それでも仕事を忘れない。流石だ。

「媒体は?無事か?」
「バッチリ♡研究室(ラボ)でガッツリ調べてやるぜ。
それにしてもよ、リーバー。」

ジジは緋装束の男と、彼を待つ女性を見ながら言う。

「なんなく結界を抜けたおまえの護衛、只の衛兵とか言ってたが…」
「あぁ」
「あやしさムンムンだぜ?」

リンクは扉の影から男の背中を見つめていた。
見つめているのはリンクだけではない。

「解せんのはアクマしか抜けられぬ。
結界を抜けたあの緋装束じゃ。」
「教団が何やら仕掛けだしたか。」
「伯爵さまにお伝えを…」

スカルたちはそう呟くと結界を見つめるのをやめ歩み去った。
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