黒白Rhapsody(D.Gray-man)

□第25夜
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私たちは治療をうけ、体中に包帯を巻かれた。
松葉杖がないためアレンの肩に掴まって歩かなければいけない。

「大丈夫?」
『ちょっと痛いけど、この程度ならすぐに治るわ。心配しないで。』

その状態で孤児院の前にある階段に座る。
近くにはアレン、神田、マリ、リンク、そしてガルマーがいる。
私はアレンの肩に頭を乗せ目を閉じる。
眠らないけれど、それだけで安心できるから。
ここにいないティモシーやエミリア、リーバーたちは人形にされていた院長や子供たちのところへ向かう。

「せんせぇ…」

ティモシーが倒れたままの院長に泣きながら尋ねる。

「いたいとこねぇ?へいき?」

目をゆっくりと開いた院長はティモシーの頬に手を添える。

「先生はとっても頑丈なのよ。へっちゃらよ。」

そして彼を抱きしめる。
しかし彼はすぐに院長から離れる。

「せんせぇ、顔あっつい!!」
「「「びえぇぇぇぇえええ」」」

院長は目を回し、他の子供たちは泣きはじめる。
ジジとリーバーが1人の子供を抱き上げる。
その瞬間リーバーはファインダーに指示を出した。

「子供たちもすごい熱だ!」
「ダークマターの影響を受けたんだ。本部で診せたほうがいい。
本部にゲートの申請してくれ!」
「はい!」
「エクソシストは休んでて!
ここは結界装置で封鎖してるから。」
「あぁ」
『わかったわ。』

その返事を聞いてエミリアとティモシーが扉から顔を出す。
そこに座る4人のエクソシストとリンク、そして警部が1人…
アレンの指が私の髪を梳く。
私は微笑みながら目を開いた。
すると考え込むガルマーの背中と横顔が見えた。

【アレン…】
【ん?】
【…ちょっと呼んだだけ。】
【そっか…】

ガルマーを見つめるアレンは呼ばないと消えてしまいそうだった。
彼の手を握ってガルマーを見る。

「ティモシーの父親を逮捕した時な、俺は子供が一緒にいるのを知ってて突入したんだ…
エミリアはあの子を引き取ろうと言ったが、あのオデコを見るたび申し訳なくて、俺を恨んでる気がして…ここへ預けた。」

彼の話を聞いているうちにアレンの手が止まって私の肩に乗せられていた。

「あの時、俺が突入なんてしなけりゃ…
なんとか見逃してもらえねェか?あの子を連れていくのは…」

俯いていた顔を上げたガルマー。
その表情は決意に満ちていた。

「俺が今度こそそばにいて、アクマからティモシーを守る!」
「パパ…っ」
「!!?」

その言葉にエミリアは嬉し涙を流しティモシーは驚愕した。
それでもガルマーに返ってきた言葉は鋭いものだった。

「ガルマー、それは…」

私たち全員に言われる言葉、それはざっくりとガルマーの心に突き刺さる。

「ムリかな?」
『ムリね。』
「ムリだろ。」
「ムリだな。」
「ムリでしょう。」
「ムリよ。」
「ムリだって。」

そしてガルマーは暗い顔で言った。

「そんなダメ出ししなくたって…」
「や、その心意気はくむんですけどね。」
「一般人にアクマの相手は…」
『貴方のほうが死んでしまうわ。』
「あなたがそばにいてもなんの役にも立たないと思いますが?」
「つか懺悔なら教会でやれ。」

アレン、マリ、私、リンク、そして神田の突っ込みがガルマーを襲う。
その様子を見てティモシーは微笑んだ。

「つーか、オレ逮捕しなくていいのかよ、ガルマー。Gだぞ?」
「呼び捨てすんな。オメーみてーなちびっこ逮捕できっか。バカヤロー!!」
「そんならでてこっかな、オレ。」
「えっ!?」
「ティモシ…っ」

ティモシーはエミリアの隣を通り過ぎ、階段を降りながら言う。

「院長せんせーもトシだしさ、チビ共もまだまだチビだし?
アクマとか刺激強すぎじゃん?」

私とアレンの隣で彼は足を止める。
そして無邪気な笑顔で告げた。

「おまえらの仲間になってやるぜ、黒づくめ。」
「『!』」
「オレはティモシー・ハースト、9歳。
イノセンスはアクマを武器化する“憑神”。
ドカンと暴れてやってやるぜ、エクソシスト!」

彼はその笑顔を一瞬にして意地の悪いニヤリとした黒い笑みに変えた。

「ただし、タダでとはぁいかねぇがなぁぁ」

その後、私たちは院長と子供たちを連れてホームに帰った。
数日後、ティモシーは団服に身を包み指令室のソファに座っていた。

「怪盗Gの損害賠償をうちが…!?」

冷や汗を流すコムイの隣で冷静な補佐ブリジット・フェイは言う。

「盗品は全部で37個。どれも高額な品ばかりです。
換金した質商はすでに国外へ逃亡しており捜すのは少々困難かと。
プラスぬれぎぬきせられ、拘禁された89名の慰謝料…」
「それとハースト孤児院が一ッ生困んないようにすること!
でなきゃ、エクソシストになってやらないゾ。」

ティモシーはくっくっくっと大きなパフェを片手に笑う。

「諸々ザッと合計いたしますと…」

ブリジットは計算結果をコムイに見せる。

「これくらいかと。」

驚額…いや、驚愕の所為でコムイは目を見開き、蒼白…

「ルベリエ長官に土下座されたほうがよろしいですね。」
「オレは安くねェぜぇぇぇ、ボ〜〜〜〜〜ス。」
「えげつないなぁ、マスター。」

憑神がティモシーに言う。
その後、コムイがルベリエに頼み込んだのは言うまでもない。


教団内の病室の1つではエミリアとガルマーが話していた。

「…パパ。」
「あ?」
「仕事戻れば。」

ベッドの横でリンゴを剥くガルマー。
ベッドの上で冷たく言い放つエミリア。

「お前…っ
仕事すりゃ家庭家庭ってウルせぇくせに。」
「怪盗Gは死んだってことでここの人と話決まったんでしょ。いつまでいるのよ。」
「いいんだよ、仕事は…お前の傷治るまで有給とったから。」
「あたし、ここに入団するから。」

―エッ?!―

彼女の言葉にガルマーは硬直する。

「だからあの子のことは心配しなくていいよ。あたしがそばにいる!」

そこには輝くエミリアの笑顔。
それを見たガルマーの顔はまるでム○クの叫びのよう。

「“男ができたらでてく”ってゆったでしょ〜〜〜(笑)」


落ち込むガルマーを怪盗Gにされていたファインダーとジジ、そしてボネールが慰める。
ジジがガルマーの肩に手をぽんっと置いた。

「警部…Gは最後にとんでもないモノを盗んでいきました。」
「「「あなたの娘です。」」」
「エミリアァァ〜〜〜〜〜」

教団内にジジたちの笑い声が響き渡った。
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