Paradox Love(うたプリ REN)

□第3話
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そんな手紙を受け取った私は首を傾げることになった。

『…HAYATOの双子の弟?聞いたことないわね。』

私は不思議に思って写真に写っているHAYATOを見つめた。

『そんな話…一切しなかったじゃないの…』

もう彼とは関係のない私だがどうしても気になった。

『…少しくらい首を突っ込んでもいいわよね?』

私は覚悟を決めるとTAKUTOの時に使っていた変装道具を手にした。
それらをつけてカラコンで目の色も変えてキャップを被り正体を隠す。
そしてサングラスで顔を隠すと、男物の服を着て家を出た。
向かう先はシャイニング事務所。
ここの社長が早乙女学園の学園長、シャイニング早乙女だから直接彼に真相を確かめようと思ったのだ。
入口で私は止められて用件を訊かれた。

「あの、本日はどのようなご用件で?」
『早乙女社長に話があって来ました。
TAKUTOが来たって伝えてもらえますか。』
「TAKUTO…!!?
もしかしてあのticktockのTAKUTOさんですか!!?」
『あぁ。ちょっと社長に確かめたいことがあるんです。』
「でも…TAKUTOさんって別の事務所の方で、今は無所属のはずじゃ…」
『ここには俺自身として来ている。
頼む、会わせてくれ。』
「どうした?」

そこに龍也がやってきた。

「ん?お前、TAKUTOか!!?」
『はい…日向龍也さんですよね。
ケンカの王子さまで有名な。』
「おぅ。社長に会いに来たのか?」
『はい。ちょっとお話があって。』

真っ直ぐ見つめると彼は頷いた。

「いいだろう。一緒に来い。」
『ありがとうございます。』

彼と共に歩きながら言葉を交わす。

「で、用件は?」
『HAYATOの双子の弟が早乙女学園にいると聞いたので、ちょっとその確認に。』
「あぁ、一ノ瀬か。
アイツなら俺のクラスの生徒だ。」
『日向さんも早乙女学園でクラスを持たれてるんですか。』
「まぁな。それから名前で呼んでくれていいぞ、TAKUTO。」
『あ、ありがとうございます。』

社長室前に着いたものの、早乙女は不在らしい。

「俺でよければ話を聞くが?
やっぱりおっさn…社長に訊く方がいいか?」
『はい、できることなら。』
「わかった。…なぁ、訊いてもいいか?」
『はい?』
「どうしてticktockを辞めた今でもそんなにHAYATOを気に掛ける?」
『どうしてって…ticktockを辞めたとしてもHAYATOは俺の友人だから。
大切に思うのは当然でしょう?』

私の返答に龍也は満足気に微笑んだ。
そのとき唐突に早乙女が現れた。

「Hello, hello〜♪」
『っ!!?』
「Youはこの事務所の人間ではありましぇんね〜
HAYATOと共に活動していたTAKUTOですね〜!!」
『…HAYATOの双子の弟、一ノ瀬トキヤについて訊きたいんです。』

彼を見つめるとサングラスの奥で早乙女は目を光らせた。

「…Youは何を知りたいんですか?」
『真実…ただそれだけですよ。』
「わかりま〜した!中に入ってくださ〜い!
あ、龍也さんは外にいてくださいね〜」
『案内していただきありがとうございました、龍也さん。』
「気にするな。」

私は早乙女に続いて社長室に入った。
この私の行動が小さなスリルの幕開けになるとは思いもしなかった。


TAKUTOとしてシャイニング事務所に行った私は龍也に案内され社長室へ来ていた。
暫くして早乙女が現れ私を社長室へ通してくれる。

「Youはミスター一ノ瀬について知りたいんですね〜?」
『はい。俺の大切な友人であるHAYATO…
彼に弟がいるとは思えません。
1年間彼と過ごしてきたけど、まったくそんな話は言わなかった…
あのHAYATOに双子の弟がいるなら絶対俺に言うはず…
お喋りなアイツが言わないわけないから…』

すると早乙女は笑いながら机に飛び乗った。

「いいでしょ〜う!!
ミスター一ノ瀬の声を実際に聞くことを許可しま〜す!!」
『ありがとうございます。』
「BUT!!条件がありま〜す!!」
『条件…?』
「ここでYouの本当の正体を明かしなさ〜い!!
そうすれば実際に早乙女学園でミスターの声を聞かせてあげましょう!!」
『…もう俺の正体は知ってんだろ、早乙女社長。』
「確認したいので〜す!!」
『はぁ…』

私は溜息を吐くとウィッグを外し、カラコンを取った。

『これでいいですか?』
「本当のNameは〜?」
『如月葵桜です。』

―久しぶりですね…でもYouは覚えていないのでしょう、ミス如月…―

早乙女はパーティーで私を見掛けているためニッと笑ったが、私はその笑みの理由を知らない。
私は早乙女と初対面だから。

「OK〜♪明日の夕方、ここに来てくださ〜い!!」
『よろしくお願いします。』
「校内は龍也さんが案内してくれま〜す!」
『…説明しておくべきですね。』

早乙女は踊るようにステップを踏みながら扉を開けると龍也を呼んだ。

「龍也さ〜ん!ちょっと来てくださ〜い!!」
「ん?」
「話がありま〜す!!」

龍也は社長室に入るや否や目の前の私を見て目を丸くした。

「なっ…!?誰だ!!?」
『俺ですよ、龍也さん。TAKUTO。』
「はぁ!!?TAKUTO!!!?」
『信じられない?』
「お、女だったのか…」

―それも結構可愛いじゃねぇか…―

『本名は如月葵桜。
HAYATOから作曲の依頼を受けたのをきっかけに、TAKUTOとして1年間契約しました。
でも、本名を出さないこと、
高校には普通に通わせてくれること、
活動は男装して行うこと、
そして契約が切れた後は一切私に関与しないこと…
それらを条件として提示したんですよ。
私の正体を知っているのは社長、HAYATO、彼の秘書、それから…美風藍ですね。』
「美風!!?うちの事務所の美風藍か!!?」
『えぇ。QUARTET NIGHTの藍ちゃんよ。
HAYATOと一緒に仕事をしてたとき彼らに会って、藍ちゃんだけにはTAKUTOが私だってバレてしまったんです。』
「そうだったのか…」

早乙女は面白いものを見つけたようにずっと笑顔を絶やさない。

「そこで龍也さんにお願いがありま〜す!
明日、Sクラスで歌のテストがありますね〜?」
「え、あぁ。それがどうかしたのか?」
『そのテストに私も連れて行ってください。』
「はぁ!!?」
「Meが許可したので問題はNothing!!」
『そこで変装するのに制服一式と茶髪のウィッグ、それからカラコンも準備していただきたいんですけど…』
「それくらいならすぐ用意できるが…
どうしてわざわざ変装する必要がある?
そのままでも十分綺麗じゃねぇか…」

私は龍也の言葉に小さく笑みを零す。

『褒めていただけるのは嬉しいですが、この素顔はあまり晒したくないんです。
目立ってしまいますし、なるべく見られたくないんですよ…』

早乙女は私の言葉の意味を理解したようだった。

―レンくんがいるだろうし…
一ノ瀬トキヤっていうのが本当にHAYATOなら素顔のまま学校に行くことなんてできないわ…―

こうして私は彼らと話した翌日、変装すると制服を着て龍也と共に早乙女学園へ向かったのだった。
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