黒白Rhapsody(D.Gray-man)

□第5夜
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コムリンの暴走事件から約2週間後、私とアレンには共同の部屋が与えられた。
私たちが同じベッドで寝ているのを見た科学班員の配慮によるものだ。
大きな部屋、2人で寝ても余裕のあるベッド…そして食堂に近い。
私たちに嬉しい条件が揃っていた。

『これでいつも一緒にいられる…』
「この年齢になって“2人同室の方が落ち着く”なんて言うのは情けないのかな?」
『いいじゃない。
“私のことが心配だからいつも視界の中に入れておきたい”とでも言えば?』
「アヤ…」

―その言葉がどれだけ僕の心をかき乱すかわかってる?―

そして私は任務以外の時、白衣を着て科学班の一員として働くようになった。
イノセンスの研究や、新型ゴーレムの開発、ファインダーから寄せられた情報の整理、そして団服の制作など、ともかく忙しい。
私の場合、すべてのジャンルに対して助言するよう頼まれているため、休む暇なんてない。

「ところでアヤ、キミの団服のデザインはどうする?」

団服制作を手掛けるジョニーに問われて、自分の団服がまだできていないことを思い出した。

『ショートパンツがいいなぁ。
でもコートはアレン君と同じ、長いやつ。』
「動きにくくない?」
『ボタンでとめるのは上の方だけでしょ。
足は自由に動くから大丈夫よ。
それから手の防具だけど指は出るように出来る?』
「もちろん!!」
「アヤ!この計算解いてくれないか?」
『はい!!』

団服が完成して1週間後、任務を与えられた。

「アヤ、任務だ。一緒に指令室に来てくれ。」

リーバー班長に呼ばれ、彼と共に指令室へ向かった。


「聞いてくださいよ、リナリー。
最近アヤって科学班の手伝いばっかり行って、僕の相手してくれないんですよ?」

怒りに任せて、1ホールのケーキを貪り食う。

「しょうがないわよ、アレン君。
アヤって科学班に欲しい頭脳の持ち主だもの。
クロス元帥からいろいろ学んだのかしら?」
「…元科学者ですからね。」
「そんなに気になるなら一緒にコーヒーでも届けましょうか?」

彼女の提案でアレンはコーヒーの乗ったトレーを持って科学班フロアへ向かった。
彼がフロアに着いた時、私は疲れ果ててソファで眠っていた。

「おぉ、アレン。呼びに行こうと思ってたんだ。」

アレンはリナリーにコーヒーを渡して私をおぶって部屋へ戻った。

「頑張り過ぎだよ、アヤ。」
『…アレン…君?』
「あっ、起こした?ごめんね。」
『いいの。それより聞いてくれる?』

アレンが近くにいてくれるだけで私は嬉しい。
でも誰かの役に立ちたいのも事実。
私は興奮気味のまま彼に語った。
その日の仕事、どんなことを頼まれたか、リナリーが淹れてくれるコーヒーがどれほどおいしいか、新しい団服を作ってもらえること…
彼はただ微笑んで聞くだけ。

『人に必要とされたことがないから嬉しくて。』
「僕もアヤが必要なんだけどな…」
『えっ?』
「いや、何でもない。」

私は首を傾げながら、もう一度アレンの背中にしがみついた。
その心地よい揺れにまた眠気がさす。

『おやすみ、アレン君…』
「…よい夢を。」

私が眠るとアレンは言った。

「夢の中では、ずっと僕の隣にいてくれればいいのに…」

そんな日々が続き、寂しさがピークに達してきた時、任務のため指令室に呼ばれた。


「たぶんね…たぶんあると思うんだよね、イノセンス…
といってもたぶんだからね、たぶん。
期待しないでね、たぶんだから。
絶対じゃなくて、たぶんだから…
でもまあ、たぶんあるんじゃないかなーってね、たぶん。」
「わかりましたよ、たぶんは。」

白衣のままの私と、後から来たアレン、リナリーがコムイの話を聞く。
ちなみにリーバー班長はコムイが動くたびに崩れてくる本や資料の山に埋まっている。
最初は助けようと思ったが、落ちてくる本の量がハンパ無いため諦めた。

「なんてゆーかさ、巻き戻ってる街があるみたいなんだよね。」
「巻き戻る?」
「そう。たぶん時間と空間がとある一日で止まって、その日を延々と繰り返してる。」

そして説明をするべきリーバー班長は埋もれていて話せないため、私が彼の手から資料を取る。

『リーバー班長の代わりに説明するわ。
調査の発端はその街の酒屋と流通のある近隣の街の問屋の証言よ。
先月の10月9日に「10日までにロゼワイン10樽」との注文の電話を酒屋から受け、翌日10日に配達。
でも何度街の城門をくぐっても中に入れず、外に戻ってしまうので、気味が悪くなり問屋は帰宅。
すぐに事情を話そうと酒屋に電話をしたが、通じず。
それから毎日同じ時間に「10日までにロゼワイン10樽」との電話がかかってくるらしいわ。
ちなみに問屋の人はノイローゼで入院中よ。』

空間が遮断されているのか、ファインダーも街に入れず、この件はコムイを困らせていた。

「というワケでここからはボクらの推測
1.もしこれがイノセンスの奇怪なら、同じイノセンスを持つエクソシストなら中に入れるかもしれない。
2.ただし、街が本当に10月9日を保持し続けているとしたら、入れたとしても出てこれないかもしれない。
そして調べて回収!
エクソシスト単独の時間のかかるヤマだ…以上。」

こうして私たちはドイツにある《巻き戻しの街》へ向かうことになった。
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